結婚や出産、また、健康診断で何か気になることあったとき。これらをきっかけに有機食材の宅配に興味を持つ人は多いものです。新しい家族のために、また自分や家族の健康のために、安全・安心な食材を使いたいと思うのはごく自然なこと。しかし「有機食材の宅配」をインターネットで検索すると、いろいろな情報があふれています。どこを選んだらいいのか、自分に合うもの、必要なものは何か、なんて情報は意外と少なく、途方に暮れてしまう方がほとんどではないでしょうか。
有機食材の宅配には「安全・安心」以外にも思いがけないメリットがあり、実はプレゼントにも向いています。ということで「有機食材の宅配」について、元有機食材の宅配会社に勤務していた経験をもとにいろいろと調べてみました。メリット・デメリット、プレゼント可・不可など、ご参考になりましたら幸いです。
目次
1.有機食材宅配の5つのメリット
1-1.重いものを持たなくて済む
食材宅配の最大のメリットは、荷物を玄関先まで届けてくれること。意外に見落としがちですが、小さなお子さまがいらっしゃる方やお年寄りにはとてもうれしいメリットです。5kg袋のお米を買いたいけど、5kgの米を自転車に乗せて、ましてや歩いて家まで持ち帰るのはとっても大変ですよね。また、おしょうゆやミネラルウオーターなどもついつい小さな瓶を買ってしまいがちになり、結果として割高になることもあります。
しかし有機食材の宅配は、玄関先まで荷物を届けてくれるから重い荷物を持つ必要なし!!どの団体も自社便の配送エリア内であれば配送料は0円~300円程度です。一定金額以上の購入額で配送料が無料になるサービスもあります。また、生協の一部では、食材のみならず日用品がほぼそろってしまうところもあります。家から一歩も出ずに生活必需品が全てまかなえてしまうなんて便利すぎます。有機食材の宅配では、食材だけでなく日用品購入も意外なメリット。重いものを持ち帰る面倒くささとはさようなら!なのです。
1-2.食材がおいしい
記事後半でそれぞれの団体の独自のこだわりをご紹介しています。どの団体も力を入れているのは野菜と果物。土作りから農家に指導したり、独自の基準を設けて減農薬や減化学肥料栽培のもののみを扱っている団体もあります。
基本的に丁寧に作られた野菜や果物はおいしいもの。しかし、農薬を減らしたり、使える肥料が限定されたりと条件が多くなると、生産者にもそれなりの技術が要求されます。そこで大切なのが土作り。いい土から生まれる野菜はおいしいことが知られていますから、有機食材の宅配で取り扱う野菜はおいしいことが多いのです。
さらにもう1つ。注目すべき点は、有機食材の宅配会社では、お客さまの注文を受けてから生産者に必要数のみ発注するということ。市販の野菜や果物の一部、例えば桃やプラム、トマトなど、熟してしまうと日持ちがしない作物は、実は店頭で長持ちするよう早めに収穫されているのです。お店では真っ赤でおいしそうなトマトも、収穫時にはまだ緑色で色づいていないものがほとんどです。同様に、貯蔵に向かない果物も、基本的に熟すかなり前に収穫されます。流通途中の傷みなどで廃棄されるものを減らすには致し方ないことですが、その作物が持つ本来の味が出る前に収穫されているのはとても残念なことですよね。これは不特定多数の消費者を対象としているうえでの必要悪とも言えます。
しかし、注文数がわかってから発注すれば、生産者は食べ頃のものが出荷できます。このメリットは、特に木でどれだけ熟したかでおいしさが決まる果物で効果を発揮します。有機食材の宅配で桃やプラムの本当のおいしさを知った、という人も多いのです。
ただ、注意しなくてはならないことが1つ。それは、きちんと産地と作付け契約をし、契約栽培のものを取り扱っている団体に限られます。市場から仕入れているところは一般のものと変わりませんので、ご注意ください。
1-3.価格が安い
有機食材の宅配は基本的に価格が割高と思われがちですが、生協はそうでもありません。なぜなら生協には税金の優遇措置があるからです。価格が安価に設定できることが生協のメリットです。一定以上の品質のものが安価で購入できるのはとても魅力的。株式会社ではこの優遇措置はないため、価格的に割高になってしまうのはしょうがないのですが、商品構成の面白さや独自商品の開発など、生協にはないメリットもあります。とはいえ、価格のみで比較するなら生協がおすすめです。
1-4.めずらしい野菜・スーパーに売ってない野菜が食べられる
スーパーに並んでいる野菜や果物は、基本的に市場が求めるものです。つまり、一般的な野菜や果物しか売られていません。生産者が珍しい野菜や果物を作っても、スーパーで売れなければJAが引き取ってくれませんし、少量では売るのにも困ります。したがって、自力で売る力のない生産者は基本的に売れるものしか作れないのです。
しかし、有機食材宅配は一般市場とは少し違います。購入者は基本的には会員あるいは組合員ですから、この人たちの理解が得られればどんな作物でも取り扱うことが可能です。一般的な市場とは客層が違うのです。
例えば、品目は選べないけど価格的にお得な「野菜セット」などの商品がある場合、珍しい、目新しいもの、一般市場では売れない野菜や果物が入ることがあります。「生産者が試しに作ってみたけど注文が取れるほどは量がないため『野菜セット』に入れてみて感想を聞く」なども会員制販売の強みです。そのうちに人気が出て、本格的に作付けして注文を取るようになる、なんていう例も実際にあるのです。
昨今話題の日本古来の在来品種など、在来種・固定種・山菜などのセットを取り扱っている団体(例・らでぃっしゅぼーやの『いと愛づらし野菜』など)もあります。地方の直売所に行かなくては食べられない、珍しい野菜がお家で食べられるなんて魅力的ではありませんか?目新しい、珍しい野菜や果物が食べられる。これは大きなメリットになります。
1-5.安全・安心食材が食べられる
記事後半でご紹介している各団体の自主基準や取り組みをご覧ください。それぞれの団体がそれぞれに自主基準を設け、食の安全・安心をはじめ環境問題やフェアトレードなどに取り組んでいます。
安全・安心の根拠は自分で調べるのは大変なもの。しかし、有機食材宅配では、その団体が契約栽培をしている産地まで出かけて栽培管理や調査をしてくれています(中にはそうでもないところもあります)。消費者はその「安心」も含めて商材を購入しているのです。
また、環境に配慮した商品を扱い、環境保護活動やリユース・リサイクルに積極的に取り組んでいる団体もあります。そこでお買いものをすることで社会貢献につながるという、目に見えないメリットもあります。安全・安心はもちろんのことですが、エシカル、SDGsなどに積極的に取り組みたい方にも有機食材の宅配会社はおすすめです。
桃の食べ頃はなりもとの色で確認できます。緑色が抜けて黄色く透明感が出るとちょうど食べ頃。しかしここまで待つと輸送中に傷みやアタリが出て商品にならないので、まだ緑色の状態で収穫されています。
2.有機食材宅配に向いている人は?
ということで、1でご紹介したメリットをふまえ、有機食材の宅配が向いている人、またどのような商材を取り扱っている団体が向いているのかを考えてみました。
2-1.出産後のママ
有機食材の宅配が最も必要なのは出産後のママではないでしょうか。赤ちゃんの面倒を見ながら、きちんとした食事をしたい。とはいえ、お野菜を切って煮込んでなど、それまでのように時間をかけた調理はなかなか難しい。必要なのは簡単にササッと料理できて、なおかつ食材がきちんとしていること。また、お買いものに出かけるのが大変なので、重い物や食材を玄関先まで届けてくれる有機食材の宅配はとても便利です。短期間の入会で日用品だけ購入するというのも1つの考え方かもしれません。
出産後のママに必要なキーワードは「時短」「日用品」。素材がカットされていて、調理時間が10~20分で簡単に完成するミールキットを取り扱っているところ、おむつや赤ちゃん向けの日用品を多く取り扱っているところ、ベビー特典などが準備されているところがオススメです。
2-2.子育て中のママ
毎日忙しい子育てママ。しかしスーパーのお惣菜を買って帰ると子どもたちに「手抜き~」とか言われてしまいます。自分自身も母によくそう言っていたことを思い出し、激しく反省しています。そんな子育てママがササッと作れるミールキット。ミールキットを毎日使うのは割高ですが、週に1~2度なら大丈夫です。また作り方によっては野菜を投入して増量も可能ですし、主食1品で割安なキットを取り扱っている団体もあります。フライパンに材料を放り込んでいけば20分で完成する、なんて簡単すぎてうれしいミールキットは大人気!その理由は「手作りしない罪悪感」を払拭できるから、という説があるのもうなずけます。
子育てママのキーワードは「時短」「簡単」「罪悪感払拭」。ミールキットのバリエーションが豊富なところを選ぶのがオススメです。
2-3.おいしいものが好きな人
有機食材の宅配のメリット「おいしさ」は、おいしいものが好きな人にはとてもうれしいもの。特に果物は前項でご説明した通り、スーパーで販売されているものよりもおいしいことが多いのですが、もう1つ、見落としがちなのが畜産品です。
以前養豚農家に聞いた話ですが、お肉の味は血統が2割、エサが8割だそうです(豚の場合)。実はお肉や卵の味は、エサの配合でほぼ決まると言ってもいいでしょう。現在、畜産品の飼料はほぼ海外からの輸入穀物でまかなわれていますが、有機食材の宅配では国産比率を上げるために飼料米を使ったり、中には全て国産飼料を使っている鶏の卵などを取り扱っているところがあります。さらに畜産品の飼料に基準を設けている団体、また契約した畜産農家のもののみを取り扱っている団体などもあります。これまであまり気にしなかった畜産品の味にもご注目ください。特に基準を設けず市販品を取り扱っているところもあるため、後半の記事を参考にしてください。
おいしいものが好きな人のキーワードはもちろん「おいしさ」、そして「こだわり」でしょうか。誰がどのように作ったかわかる、契約栽培・契約農家のものを取り扱っている団体がオススメです。
2-4.安全・安心・オーガニック好きな人
有機食材宅配の団体の中でも、野菜・果物・畜産品はほぼ契約農家のものを取り扱うところと、契約栽培は一部でその他は市販品と同等のもの、ほぼ市販品と、取り扱う食材に大きな違いがあります。このあたりはウェブサイトをかなり探さないと出てこないし、基準の文章を読んでも頭にすっと入ってこないのが困りもの。じっくり読めば国の法律のことしか書いてなかったり、逆にものすごく細かい基準が決まっていたりと団体によってまちまちです。後半の記事にそれぞれの基準を記載していますので、ご確認ください。
「安全」はともかく「安心」は、これらの基準がどれぐらい厳しいかでそのレベルが判断できます。有機JAS認証を取得したものを中心に扱っているところ、厳しい自主基準を設け、その基準をクリアしたものしか取り扱わないところなどは、まさに「安全・安心」「オーガニック大好き!」な人にオススメです。
2-5.健康が気になる人、お買いものになかなか行けない人
出産後のママの項でも書いたように、有機食材宅配のメリットの1つは、どんなに重いものでも玄関先まで届けてもらえること。米や日用品以外にも、大根や白菜、キャベツなどの大型野菜をスーパーで買うのは大変です。宅配ならまとめて届けてもらえてとても便利ですよね。気になる送料ですが、野菜セットを注文すれば送料が割安になったり無料になったりする団体があるので、後半の記事をご確認ください。
野菜セットを購入するメリットは、スーパーで購入すると自分の好きな野菜しか買いませんが、セットで届くとあまり食べない野菜も入っているため、結果的に野菜をたくさん食べるようになることです。子どもが巣立ち、夫婦2人世帯で健康が気になる人や、重いものを持ちたくない高齢者世帯にも日用品が豊富で野菜セットを取り扱っている団体がオススメです。
では、有機食材の宅配にはどんな団体があるのでしょう。その前に、「なぜ会員登録しなければならないのか」「週に1度決まった曜日にしか届けてくれないのはなぜなのか」などの縛りがあるのを疑問に思ったことはありませんか?有機食材の宅配会社には「生協」と「株式会社」の2つの業態があるけど、それはなぜなのか?なんて、疑問に思うことはありませんか?その理由は有機食材宅配の歴史にありました。ということで、まずは有機食材宅配の歴史を見ていきます。
3.食材宅配の歴史をひもといてみよう
あまり意識されていないかもしれませんが、有機食材宅配の会社には、生協と株式会社の2つの業態が存在します。したがって厳密に言うと「食材宅配の会社」という表現は少し変なのですが、とりあえず良しとして、それぞれがどう違うのか?まずは歴史をひもといてみます。
3-1.生協の歴史
食材宅配の歴史は、昭和23年の「消費生活協同組合法」という法律の施行後に生まれた「生協」から始まります。生協とは、
消費生活協同組合(生協)とは、消費生活協同組合法(昭和23年法律第200号)に基づいて設立された法人で、同じ地域(都道府県内に限ります。)に住む方々、または同じ職場に勤務する方々が、生活の安定と生活文化の向上を図るため、相互の助け合いにより自発的に組織する非営利団体です。
(厚生労働省のウェブサイトより)。
生協は戦後の「まとめて購入して組合員に安価で販売する」という相互扶助の仕組みから生まれました。食材を取り扱う生協だけでなく、大学生協などもこれに含まれます。物販のみならず、共済や保険などの事業を行うことも可能です。しかし前提条件として「同じ地域・同じ職場であること」が定められています。
生協には、法人税の優遇措置、固定資産税非課税などの税制上の優遇措置があります。これにより商品の利益率が低く設定できるため、組合員は商材が「安価」で購入できます。これが生協の最大のメリットです。現在でも、株式会社と生協では同じ商品が全く違う価格で売られているのをよく見ますが、これは組織の違いのせい。決して株式会社が暴利を貪っているのではありません。が、この違い、意外と見落としがちかもしれません。
3-2.価格から安全・安心へ。価値の転換
さて、当時の生協で優先されたのは主に価格で、食の安全・安心にはそれほど関心がなかったとも言えます。しかし、1974年に朝日新聞で連載が始まった有吉佐和子さんの『複合汚染』をきっかけに、社会的に「食の安全・安心」に注目が集まるようになりました。この流れの中、1975年に有機食材宅配会社の老舗、株式会社大地(現在のオイシックス・ラ・大地)が、農薬や化学肥料を使わず有機質肥料を使って無農薬で作物を栽培する生産者の野菜を、都市部の「安全な食べものが食べたい」という消費者に届けることを目的に設立されます。
それまでの野菜は、JAに出荷された後、市場を介して販売店に売られていました。ここで初めて、市場を通さず物を運び、自分たちで売るという「産直流通」の仕組み、クローズドな会員制で食材を販売する仕組みが生まれたのです。
さらに、低温殺菌牛乳の推進や合成洗剤反対などの環境運動など、生協でもいろいろな活動が行われました。現在へ至る道程もろもろの最初の一歩は、1970年代に始まったのです。
3-3.会員制・注文制・共同購入という仕組みの確立
週に1度注文書を回収し、翌週届けるという食材宅配の基本的な仕組みや、生協では「組合員」、株式会社では「会員」登録をすることで食材が購入できる「会員制」は、これ以降も食材宅配事業の基本的な仕組みとなりました。
当時は生協も大地も主な販売形態は「共同購入」、これは近所の会員や組合員数名で構成される班単位で商品を購入し、荷物は班長さんの家、あるいは決まった場所に一括で届けるというものでした。販売側は配送費の節約や資材の手間が省け、消費者にとっては「引き売り」など余ったものを安価で購入できるなどのメリットがありました。しかし各自が班長さんの家に取りに行く、また、交代で受け取らなくてはならないなど、消費者にはそれをわずらわしく感じる人も多かったようです。さらに、牛や豚は一頭まるごと買い上げて各部位を分配するため「好きな部位が自由に選べない」などの制約もあり、共同購入は徐々に時代に合わなくなっていきました。
3-4.共同購入から個人宅配へ
働く女性が増え、共同購入という形態の限界が見え始めた1985年、他社に先駆けて大地が「個人向けの食材宅配」という仕組みを作りました。ここから「有機食材の個人宅配」が本格的に始まったとも言えます。
マンガで初めて食品添加物や輸入柑橘類の防カビ剤など、食の安全・安心を取り上げた『美味しんぼ』の連載がビッグコミックスピリッツで始まったのが1983年。1980年代後半には、雑誌『クロワッサン』(マガジンハウス)で大地を守る会の当時の広報室長・戎谷徹也さんがインタビューを受けたりと、農薬と化学肥料にとどまらず、食品添加物や収穫後農薬(ポストハーベスト農薬)などにも注目が集まるようになります。
わたしが株式会社大地に入社したのは1992年ですが、1980年代の終わりには会員登録数が劇的に伸びていました。調布にあった配送センターが手狭になり、一部を残して市川塩浜に大きな配送センターを建てて引っ越した後も会員の伸びは止まらず、新聞や雑誌などのメディアで取り上げられることも増えていました。
有機食材の宅配という業界に大きな波が来ていることを、有機業界関係者は皆実感していました。これに伴い、有機食材の宅配事業を行う会社が次々に生まれます。
生協では、地域の生協が次々に統合し連合会を形成します。これによって経費削減やオリジナル商品の開発などもできるようになり、個人向けの宅配も次々にスタートしました。1990年代には、現在活躍している大手の有機食材宅配会社がほぼ出そろいました。
2000年には、有機農産物と表示して販売する際のルール「有機農産物の日本農林規格(有機JAS法)」が施行され、有機農産物の取り扱いをメインにする会社も出てきました。インターネット環境が整い、誰もがネットにアクセスできるようになると、ネットを中心に販売する食材宅配会社が出てきました。ウェブ注文のみを展開するオイシックスが生まれたのが2000年。2017年には、地域限定ながらAmazonでも食材を宅配する時代になりました。
現在は食材宅配の会社も増え、「会員制」を取らなくなっているところもあります。消費者にとっての利便性がどんどん増して選択肢が増えた分、どこを選べばいいかわからない、なんてことも。しかし食材宅配の基本は「生協」か「株式会社」です。どちらもそれぞれにメリット・デメリットがあります。
では、それぞれの有機食材宅配サービスを見ていきましょう。
4.主な有機食材宅配サービス
4-1.生協
生協には「同じ地域」であること、という条件があります。2007年の法改正で「主たる事務所の所在地のある県に隣り合う県の範囲内」ならOKとなりましたが、それまでは生協は県をまたいでは存在できませんでした。つまり県ごとに地域の生協があったのです。しかし、小さな組織ではできることが限られるため、地域生協が複数統合して連合会を形成し、プライベートブランドの開発や配送業務の効率化を図りました。リターナル瓶や商品情報紙の回収など、リユース・リサイクルでは大規模な生協が有利になります。
そんな中でも、あえて地域生協としてがんばっているところもあります。これらは「単協」と呼ばれます。生協のサイトの組織概要に「連合会」と記載されているところは、前述のように複数の生協による連合会に所属している生協です。商材を買う消費者には組織のあり方にあまり変わりはありませんが、規模が大きな生協と単協では取扱商品に微妙な違いがあります。つまり、どちらもそれぞれにいいところ、そうでもないところがあるため、自分に何が必要か、よく見極めてみてください。
4-1-1.パルシステム生活協同組合連合会
・設立 1990年2月9日
・会員生協数 13会員
・活動エリア 1都11県(宮城県/福島県/茨城県/栃木県/群馬県/ 埼玉県/千葉県/東京都/神奈川県/新潟県/山梨県/静岡県)
・会員(組合員数) 152.2万人
・配送料(手数料) 1回194円(税込) 利用金額に応じて割引あり。
1回5,000円(税込)以上の注文でパルシステム手数料が162円
1回12,000円(税込)以上の注文でパルシステム手数料が無料
加入5年以上の方は1回8,000円(税込)以上の注文で無料
その他 ベイビー・キッズ特典、シルバー特典など手数料の割引サービスもあります。
「パルシステム生活協同組合連合会」は、首都圏を中心とした地域生協とパルシステム共済生活協同組合連合会が加盟する連合会組織です。食を中心とした商品の供給事業や共済・保険事業、福祉事業などを展開しています(ウェブサイトより)。
- 青果物等栽培基準について
「コア・フード」「エコ・チャレンジ」という独自の栽培基準を設定。商品情報紙に「コア・フード」と「エコ・チャレンジ」のマークが記載されています。この2つは「契約栽培で生産者が明確に指定されている商品」。以下、ウェブサイトより引用します。
「パルシステムの商品」
○コア・フード
有機JAS認証を取得した「有機農産物」、またはそれに準ずると判断された農産物。化学合成農薬、化学肥料を使わない(※)、パルシステムのトッププランドです。※有機JAS認証での使用可能資材を除く。
○エコ・チャレンジ
化学合成農薬、化学肥料を各都道府県で定められた慣行栽培基準の1/2以下に削減し、パルシステムが定める「削減目標農薬(注)」を不使用。※青果は、除草剤、土壌くん蒸剤不使用。
注・削減目標農薬の具体名は公開されていません。
○上記2ブランド以外
ウェブサイトには特に記載なし。商品情報紙「きなり」に「パルシステム基準を満たしている」との記載がありますが、それ以上のことは不明です。
- 食品添加物について
厚生労働省で認可されている食品添加物は約1,500物質のうち、パルシステムの独自基準で使用できる食品添加物は1161物質ですが、実際に使われているのは300物質程度(Q&Aより)。 - 放射能検査について
全ての商品ではなく、放射能汚染の範囲を考慮し、「ゲルマニウム半導体検出器」を2台使って実施。結果はWEBサイトで公開しています。 - 遺伝子組換え作物について
基本的には「NO」ですが、取り扱う商品全てに「不使用」ではありません。商品カタログでは「不使用」「主原料不使用」「副原料不分別」「不分別」の遺伝子組換え表示を対象商品に行っています。 - その他
包材のリユース・リサイクルを行っています。対象は、ビン、牛乳パック、ヨーグルトパック、卵パック、ペットボトル(一部のみ)。商品カタログも回収しています。
★パルシステムのここがオススメ
会員生協数が13団体と大きな連合会のため、プライベートブランド商品のラインナップが非常に豊富です。取扱商品量が多く、食材以外にもトイレットペーパーなどの日用品や園芸用品、文房具、衣類、コンサートチケットや本、DVDなどさまざまなもの、ありとあらゆるものが注文でそろいます。どんなに重いもの(例えば家具)でも注文すれば玄関先に届けてもらえるのが最大のメリット。基本的な商材以外にも、お菓子やお惣菜などの有名ブランド品が催事品として商品カタログに掲載されるのも楽しみの1つですね。お買い物に行く暇がない、宅配で何もかもをそろえたい方にオススメです。
4-1-2.生活クラブ事業連合生活協同組合連合会
・設立 1990年3月12日
・会員数 33単協 1連合会(2018年4月)
・組合員数 371,069人(班、個別配送、デポー含む)(2016年)
・活動エリア・北海道、東北、北陸・甲信越、関東、東海、近畿のそれぞれの生活クラブ
・配送料 週の注文金額が、3,000円(税抜)以上(*1)の場合無料、3,000円以下の場合162円(税込)
生活クラブは1965年に「まとめ買いして安く分け合おう」と、200人あまりのお母さんたちが集まって牛乳の共同購入を始めたことからスタートしました。
脱脂乳や加工乳などが主流の当時、「普通牛乳」の共同購入をしながら「牛乳とは何か」を学び、確かな品質の牛乳を確実に手に入れたいと考えるようになりました。
そしてついに、酪農家と共同出資して、直営の牛乳工場を設立しました。1979年のことです。
牛のえさから飼育環境、生産農家、原乳の品質管理、収乳・製造日、製造・洗浄工程、容器や価格まで、すべてを把握できる牛乳を購入するようになりました。
これが、現在につながる生活クラブの活動の原点となっています。(ウェブサイトより)
- 青果物等栽培基準について
毒性の強い農薬を削減指定農薬と位置づけ優先的に削減(注・リストは非公開)。2015年度は提携産地の取組品目のうち71.5%で不使用を達成。生活クラブブランド「あっぱれ育ち」は栽培期間中、化学合成農薬と化学肥料不使用のもの。栽培している畑で化学合成農薬や化学肥料をできる限り減らして育てた「はればれ育ち」、「特徴のある味を持つ品種」や「地域で昔から栽培している品種」「たぐいまれ」については商品カタログにマークがついています。 - 加工品ほかについて(『食の安全へのとりくみ』より)
食品添加物については、現在、日本で認められている食品添加物約1,500種類のうち、天然香料、一般飲食物を除いた804品目のうち85品目まで削減しています。生活クラブの消費財で使用しているものは使用目的を限定し、全て公開しています。 - 遺伝子組換え作物について
「遺伝子組換え作物・食品は取り扱わないことを基本とし、やむを得ず使用する場合は、情報を公開して取り組む」と決定し、遺伝子組換え食品・飼料・添加物などを取り除くよう進めています。 - 放射能対策について
食品放射能測定器を6台設置し、ほぼ全品目の放射能検査を実施。検査結果はウェブ上のデータベース検索ページで公開しています。
★生活クラブ、ここがオススメ
取扱商品を「商品ではなく消費財」と呼ぶ生活クラブは、生協のうちでも硬派と名高い生協です。安全・安心の取り組みは、消費者への情報公開という点で徹底しています。また、環境負荷の高いものは取り扱わないこと、国産品優先、輸入品はフェアトレードなど、エシカル視点ももちろん徹底。最近では再生可能エネルギーの電気の共同購入も特筆事項でしょう。価格的には「あっぱれ育ち」でもスーパー価格とそれほど変わらない印象ですが、葉物類などの規格が250gと少し多め。家族人数が多く安心食材が食べたい&環境問題に興味がある方にオススメです。
4-1-3.コープデリ生活協同組合連合会
コープデリ連合会のウェブサイト
・略称 コープデリ連合会
・設立 1992年7月21日
・活動エリア コープデリグループ。※コープデリグループとは、コープみらい・いばらきコープ・とちぎコープ・コープぐんま・コープながの・コープにいがた・コープクルコ、そしてコープデリ連合会とその子会社で構成されています。
・配送料 基本は180円 6,000円以上のご注文で無料。その他、赤ちゃん割引、子育て割引もあります。また週1回や週3回などのくらしにあった宅配サービスも。
「コープデリ」は一都七県の都県単位のコープ(生協)が集まった「コープネットグループ」が取り組む宅配サービスです。週に一度、ご自宅の玄関先までお届けするのは、食品や生活雑貨など実に3000品目以上!!「コープデリ」の“デリ”が、“デリシャス(おいしさ)”と“デリバリー(お届け)”を表すように、たくさんのおいしさを、あなたのくらしにお届けします。
(ウェブサイトより)
- 農薬について
特に自主基準はなし。使用履歴などについてはGAPなどで確認する体制を要望し、残留農薬検査も行っています。 - 食品添加物について
自主基準で2段階(安全性を量的に判断できない食品添加物12種類と安全性を量的に判断できる科学的根拠はあるが、懸念すべき問題点がある添加物43種類)の使用基準あり。コープ商品には使用不可、一般品の場合は特に制限なし。 - 遺伝子組換え作物・食品について
一般品と同等の表示 - 食品中の放射性物質について
自主検査を行っており、ウェブサイトなどで公表。
★コープデリ、ここがオススメ!
「6,000品目からあなたの“ほしい”が見つかる!」とサイトに記載されている通り、商品数の多さが魅力。加工品・冷凍食品の取扱数が多く、レンジでチンするだけといった時短商品や、離乳食などのラインナップも豊富です。さらに、野菜たっぷり、有名な料理家監修のミールキットなど、最短で10分で調理できたりと、忙しい子育てママにはものすごーく魅力的。ただ、安全・安心については、他団体と比較して自主基準らしい基準は設定されていません。産直品以外はほぼ一般品と同じなので、安全・安心よりも便利さ・時短を優先する方にオススメ。子育て割引も魅力的ですね!!
4-1-4.東都生活協同組合
・設立 1973年6月10日
・組合員数 24万1,133人
・活動エリア 東京、神奈川、さいたま、千葉の各地域(配送エリアではない地区もあります)
・配送料(手数料) 194円。注文金額が8,000円以上 10,000円未満で164円、10,000円以上143円。ベビー割・シニア割などの手数料免除措置があります。
東都生協は、より安全でよりすぐれたものを手に入れたいという消費者の願いから1973年に設立されました。「産直」「協同」「民主」-いのちとくらしを守るために- の基本理念のもと、消費と生産を結ぶ「産直」(産地直結)を基軸とした事業と活動を進めています。
(ウェブサイトより)
- 青果物等栽培基準について
東都生協(コープ)が毎週お届けする商品案内には、全ての野菜・果物・米に「栽培区分」を表示。栽培区分表示は以下のようになっています。
・「産直」東都生協が農産物ガイドをもとに「いつ」「誰が」「どこで」「どのように」栽培したか確認した産直農産物
・「東都めばえ」化学合成農薬、または化学肥料をおおむね30%以上削減して栽培された産直農産物。
・「東都わかば」化学合成農薬、または化学肥料をおおむね50%以上削減して栽培された産直農産物。
・「東都みのり」有機JASの認定を受けた農産物。または、化学合成農薬や化学肥料を使用せずに栽培した産直農産物。
また、使用農薬名や使用回数の上限などを産地と相互で確認する一方、東都生協独自に年間およそ700品目の農産物を対象に残留農薬検査を実施し、安全性について監視しています。 - 遺伝子組換え作物について
商品情報紙にて、遺伝子組換え原料は一切使用していない「組み換え不使用」、遺伝子組換え不分別の主原料を使用している「主組換不分別」、遺伝子組換え不分別の原料を微量使用した「微組換不分別」の3段階で表示。 - トレーサビリティについて
食の安全を守りたいという願いから設立された東都生協(コープ)の最大のこだわりは、農畜産物を100%産直(=産地直結)でお届けしていること。青果物、米、精肉、牛乳、たまごは「いつ」「どこで」「だれが」「どのように」作ったのか生産履歴の明らかなものだけを、宅配でお届けしています。また加工食品も、原材料の原産地から製造場所まで可能な限り国内産にこだわり、製造工程や衛生管理、流通過程などが確認できる商品をお届けしています。 - 放射能検査について
東都生協は、チェルノブイリ原発事故(1986年)が起きた際、食品の安全性を確認することの重要性を認識し、1988年に放射能測定器(ゲルマニウム半導体検出器)を導入。それ以降20年以上にわたって、毎週、産直食材の中から1~3品目を抽出してのモニタリング検査を行ってきました。検査結果はホームページでは毎週、チラシでは2週間分の結果を商品案内と一緒にお知らせしています。
★東都生協、ここがオススメ
これまでご紹介してきた生協はグループ化された大きな組織ですが、東都生協はあえて単協という形を選択しています。設立以来「産直」を大切にしていることから、取り扱う野菜類は全て契約栽培のもの。青果物、米、精肉、牛乳、たまごは「いつ」「どこで」「だれが」「どのように」作ったのか生産履歴の明らかなものだけという徹底ぶりです。ただ、加工品のラインナップや日用品の取扱量は他の大きな生協と比較してそれほど多くはありません。また、オリジナル商品などの独自性もいまひとつ。ということで、野菜や果物、お肉など、素材を大切にするお料理好きな方にオススメ。有機農産物の取扱量が多いのも魅力です。
4-2.株式会社
生協ではないため税金の優遇がなく、価格が割高という印象のある株式会社の食材宅配会社ですが、食べる楽しさや、おいしさについて定評があるのが特徴です。そんな中、老舗の2社、大地を守る会とらでぃっしゅぼーやが一昨年、昨年と次々にオイシックスと統合したのは記憶に新しいところ。3社が統合し、有機食材の宅配会社としては日本一の規模となりました。ホールフーズを買収したAmazonが有機食材の宅配に参入するかも、なんて噂も流れる昨今、今後に注目したいところです。
4-2-1.オイシックス・ラ・大地株式会社
・設立 2018年10月
らでぃっしゅぼーや・大地を守る会・Oisix、3社が統合して1社になっていますが、それぞれのブランド名はそのままで活動しています。ということで、それぞれの宅配という切り口で見ていきます。※Oisix、大地宅配、らでぃっしゅぼーやの宅配についての会員数は『FY2019/3 3Q決算説明資料』より引用
4-2-1-1.Oisix
・設立 2000年6月
・会員数 19万7,272人
・宅配エリア 全国(ヤマト宅急便にて配送)
・送料 注文金額によって変わります。
例)定期宅配サービス「おいしっくすくらぶ」に登録した場合、4000円未満400円、6000円以上無料など。
- 取扱基準 Oisix食べもの安全宣言
- 青果物等栽培基準について
有機農産物あるいは特別栽培農産物を基準とし、栽培管理表を取得しています。成果物については、それぞれの農薬や化学肥料についてどのような内容であるか表示されています。 - 加工品について
使用を認めているものはビタミンCなど10品目。できるだけ使用を認めていないもの、条件付きで認めているものなど、使用しないもの7品目(ソルビン酸、赤色2号などの着色料)など細かく設定されています。使用を認めているものの中に「異性化糖(果糖ぶどう糖液糖など)」が含まれていますが、異性化糖は食品添加物ではなく食品のため、なぜここに入っているかは不明。 - 遺伝子組換え作物
主原料のみ非遺伝子組換え作物を使用。※主原料の定義ははっきりしていません。 - 放射能検査
検査はOisixの配送センターで実施しています。農水省などが指定する検査機関が使用している高精度精密分析装置「ゲルマニウム半導体検出器」を使用し、放射性ヨウ素及び放射性セシウムが「不検出」を確認できたもののみをお届けします。
★オイシックス、こんな人にオススメ
『FY2019/3 3Q決算説明資料』に記載があるように、Oisixの顧客層は「子育て中のワーキングママ」。ということで、キットOisixを始めとする時短料理が人気です。設立当初からのテーマ、「より楽しい食卓を演出」できる食材、家族で一緒に楽しめる食材など、基本は楽しさ。したがって全ての青果物が契約栽培なわけではありません。とはいえ、有機農産物か特別栽培農産物(地域の農薬・化学肥料(窒素成分)の50%減の作物)のみの取り扱いですから、安全・安心も気になりつつ楽しい食卓を演出したい方にオススメ。また、「産直おとりよせ市場」では日本全国のおいしいものをお届けしています。こちらはギフトにも使えるため、おいしいもの・珍しいもの好きの方にプレゼントしても!
4-2-1-2.大地宅配
・設立 1975年
・会員数 4万8,970人
・配送エリア 全国。一部配送できない地域があります。
・配送料 例)大地を守る会の専用車で配送する定期会員(送料お得便)の場合
商品代金(税込) 送料(税込)
3,780円未満 302円
3,780円~4,860円未満 216円
4,860円~8,640円未満 108円
8,640円~16,200円未満 54円
16,200円以上 0円
その他、専用車が走っていない地域の定期会員、一般会員などそれぞれ会員の形態と注文金額、専用車とヤマト宅急便の使用によって細かく変わります。
「送料について」
大地を守る会とは 日本の第一次産業を守り育てること、人々の生命と健康を守ること、持続可能な社会を想像すること。大地を守る会は、このミッションを達成するために、ソーシャルビジネス(社会的企業)として活動します。
(ウェブサイトより)
- 取扱基準 大地を守る会基準「あんしんの約束」
- 青果物等栽培基準について
取り扱っている青果物は全て、作付け契約を結んだ契約生産者のもの。原則、圃場への除草剤の使用は不可(お米のみ一回使用可)、禁止農薬・控えていただきたい農薬などが細かくリスト化されています。出荷に際しては各生産者の圃場登録を行い、栽培前には栽培計画書を、出荷前には栽培履歴を確認し、確認が取れたものを取り扱っています。また、社内に「環境食料分析室」を設置し、常時抜き取りで残留農薬検査を行っています。
「有機農産物等生産基準全文」より - 加工品について
基本的に国産原料を使用。食品添加物は原則使用不可。例外として上記PDFの表にあるもの(例・豆腐に使うにがり《塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、粗製海水塩化マグネシウム》や麺類に使うかんすいなど)については使用を可としています。
「別表6 使用を認めている食品添加物の一覧」より - 遺伝子組換え作物について
原則使用禁止。 - 放射能検査
「ゲルマニウム半導体検出器」を1台、「NaI (Tl) ガンマ線スペクトロメータ」を4台、弊社・物流センターに設置し検査。検査して不検出となった商品はお買いものサイトの専用カテゴリで紹介しています。
★大地を守る会、こんな人にオススメ
大地を守る会の青果物は全商品、契約栽培されたもの。したがって、天候不順などで出荷が遅れ、注文数に満たない際には欠品になるリスクがあります。欠品は契約栽培ならではのデメリットであり、契約栽培の証拠でもあるのですが、注文した野菜や果物が必ず届いてほしいという方には向かないかもしれません。
他団体にない特徴は「個人農家」の野菜、果物、畜産品を取り扱っていること。一般的には発注に融通がきくグループ化された生産者のものが多いのですが、何しろ老舗有機食材宅配会社、設立当初からお付き合いのある個人農家がいらっしゃいます。個性豊かな野菜も魅力的ですが、特に果物のおいしさは秀逸です。また禁止農薬リストなど全てを公開しているのも有機食材宅配団体の中では1社のみ。しかしその姿勢故か、全ての商品が他団体と比較して割高というのがネックです。
ということで、経済的に余裕があり健康が気になる人、おいしい野菜や果物を食べたい人、安全・安心にこだわる人にオススメです。
4-2-1-3.らでぃっしゅぼーや
・設立 1988年 環ネットワーク株式会社として設立
・会員数 7万3,364人
/配送料 「らでぃっしゅぼーや専用車」(一部地域)と、「ヤマト宅急便」(全国)で、配送料体系が異なります。また、ぱれっと(野菜セット)をご利用の場合と注文品のみの場合でも異なります。
例)らでぃっしゅぼーや専用車の配送料 ご注文金額(税抜)5,000円以上は無料、3,000~4,999円ぱれっとアリの場合180円、注文品のみの場合300円など。
ヤマト宅急便の場合は8,000円以上はどちらも無料となります。
※専用車でのお届けは、関東エリア・近畿エリア・中京エリア・北海道エリア・仙台市の一部エリアとなり、それ以外はヤマト宅急便にてお届けになります。
また、妊娠期間中や3歳未満のお子さまがいらっしゃる方を対象に、らでぃっしゅぼーや専用車でお届けする定期お届け品(単品商品、「登録サービス」、「おいしい定期便」)の配送料が最大36カ月(156週間)無料にするベビー特典もあります。
- 取扱基準 RADIX基準
- 青果物等について
作付け契約を結んだ生産者のもののみを取り扱っています。栽培前には栽培計画書、出荷前には栽培履歴を確認し、産地訪問も行っています。抜き打ちで残留農薬検査も。 - 加工品について
原則として国産原料を使用。食品添加物は、国の登録食品添加物1,519種類のうち、らでぃっしゅぼーやの加工品で使用しているのは220種類。 - 遺伝子組換え作物について
原則使用禁止 - 放射能検査
17都県に該当する全産地・全品目について専門の分析機関、又は弊社での検査施設による分析を行っています。結果はウェブサイトにて検索できます。
★らでぃっしゅぼーや、ここがオススメ
設立当初は旬の野菜セット「ぱれっと」の購入が必須だった、らでぃっしゅぼーや。現在は必須ではありませんが、ぱれっとを定期的に購入したほうがお得感があるため、手作り料理が好きな人、野菜を沢山食べる人に向いています。
青果物については、大地を守る会とほぼ同じ栽培基準です。実は取引農家も個人農家以外は同じ産地が多く、青果物に関しては大地を守る会と大きな違いはありません。おいしさも栽培履歴が追える安心感も同じです。大きな違いは畜産品、加工品などで、大地宅配よりも割安感があり、おしゃれな商品が多いのが特徴です。またオーガニック卵など、他団体があまり取り扱っていない商品も。さらにベビー特典など、若いママがらでぃっしゅぼーやの商品を購入しやすい仕組みも整っています。
ということで、らでぃっしゅぼーやは安全・安心のほか、野菜をたくさん食べるお料理好きな人にオススメ。ちなみに、数ある団体のなかで、お試しセットのプレゼントが可能なのはらでぃっしゅぼーやのみでした。
4-2-2.ビオ・マルシェの宅配
・社名 株式会社ビオ・マーケット
・設立 1983年 8月
・会員数 非公開
・配送エリア 全国 ※地域によって自社便エリアと宅急便エリアがあり郵便番号から検索できます。
・送料 自社便コース 野菜セットを注文している場合は野菜セット内に送料が含まれるため無料。野菜セットなしの場合は500円。
ヤマト宅急便ご利用の場合 野菜セット・冷凍品の有無およびお買い上げ金額によって送料が異なります。
野菜セットあり
ご注文金額(税込) 冷蔵品+常温品 冷蔵品+常温品+冷凍品
3,240円未満 378円(税込) 1,296円(税込)
3,240円以上 280円(税込) 1,198円(税込)
野菜セットなし
ご注文金額(税込) 冷蔵品+常温品 冷凍品のみ 冷蔵品+常温品+冷凍品
3,240円未満 918円(税込) 918円(税込) 1,836円(税込)
3,240円以上 820円(税込) 918円(税込) 1,738円(税込)
その他、北海道・沖縄については追加料金が発生します。
「安心で美味しいオーガニックを、特別な人だけでなく、求める全ての人に届けたい」そんな想いをもって、株式会社ビオ・マーケットはスタートしました。1983年、兵庫県西宮市の小さな八百屋として創業したわたしたち。当時のスローガンは、「街を耕す百姓になろう!」。そこには、有機農業を広げていくことが、自然環境に配慮した持続可能な社会をつくり、食べる人々の豊かな暮らしをつくることにつながるはず!という想いがこめられていました。
(ウェブサイトより)
- 取扱基準 ビオ・マルシェの商品
- 青果物について
基本的に有機農産物。有機農産物を目指しながらその表示ができないものも可(例・栽培技術が確立していない特定の作物。ただし可能な限り有機農産物の栽培に近づける努力が認められるりんご、ぶどうなど)、輸入品は海外オーガニックのもの。 - 加工品について
有機JAS制度に基づいた有機加工品を基本とし、そうでない場合は原材料が国内で生産されたものなど。遺伝子組換え技術の使用のないものなど。 - 放射性物質への対応について
ウェブサイトで放射能の測定値を公表し、カタログで農産物の産地表示を徹底するなど、お客さまに安心して商品を選択していただけるよう取り組み、自主的な検査も行なっています。検査結果も公開しています。
★ビオ・マルシェ、ここがオススメ
有機農産物・有機加工品にこだわった商品ラインナップが特徴のビオ・マルシェ。有機農産物とは有機農産物の日本農林規格(有機JAS)で定められた規格で、有機JAS認証を取得した農産物のことをいいます。有機JASを取得した農産物には有機JASマークを添付して販売することができます。有機農産物は、使用できる農薬や資材に制限があり、圃場管理や栽培管理にも厳しいルールが定められていて、栽培履歴や栽培に使用した資材などが全て追跡できることもメリットの1つです。安全・安心について有機JASマークは国のお墨付きとも言えます。
さて、ビオ・マルシェの商品情報誌に掲載されている青果物も加工品も有機JASマークがついている商品がほとんど。「よくこんなにそろえることができたよね」と冷静に感心してしまいました。が、オーガニックにこだわるためか、商品数が少なめ。また、野菜セットの注文がない場合、送料が割高になってしまうのもデメリット。
ビオ・マルシェの宅配は、日用品の購入は特に考えず、野菜をたくさん食べたい人、オーガニックにこだわる人にオススメと言えるでしょう
5.お試しセットを試してみた!
栽培基準やメリット、デメリットをご紹介してきましたが、実際の商品はどうなの?ということで、お試しセットを用意している会社の「お試しセット」を注文してみました。その内容と、食べてみた感想をご紹介します。
5-1.大地を守る会
・お試しセット1,980円
・セット内容 りんご2個、安納芋2個、白菜1/4個、キャベツ1/2個、納豆3P、絹ごし豆腐4P、人参2本、油揚げ3枚、ヨーグルト1個、ぶなしめじ1P、野菜を食べるジュース1本、豚肉1P
・同梱の書類 旬を美味しくいただくレシピ(お試しセットおすすめの食べ方)、大地を守る会5大特典プレゼントのご案内、大地を守る会で始めるからだ喜ぶ食生活、大地を守る会はじめてbook、商品カタログツチオーネ、NEWS大地を守る(会報誌)
届いた白菜、ぶなしめじ、豚肉でシンプルなスープを作ってみました。豚肉からいいだしが出てとてもおいしい一品に。白菜は甘く、たっぷり食べられます。
・感想 まずは古巣の大地宅配からお試しセットを注文してみました。特筆すべきは安納芋のおいしさ、野菜ジュース、豚肉がべらぼうにおいしかったこと。わたしは大地宅配の会員なので、どれもふだん食べているものばかりで気づきませんでしたが、後日らでぃっしゅぼーやのお試しセットが届いて1つ気づいたことがありました。それは、大地は野菜の規格が少し多めなことです(らでぃっしゅぼーやはキャベツは1/4とか)。なので、大地のお試しセットは野菜をたくさん食べる人に向いています。
また、お試しセットで3日分の晩ごはんのおかずができるレシピもついていて、とても丁寧な印象でした。5大特典プレゼントはOisixの特典プレゼントにそっくりで、同じ会社になるってこういうことなのかと感慨深かったです。
5-2.らでぃっしゅぼーや
・お試しセット1,980円
・セット内容 宝石イチゴ1P、水菜1束、かぶ1P、人参2本、小松菜1束、原木生椎茸1P、長ネギ1束、大根1/2本、キャベツ1/4個、わさび菜1P、丹沢高原豚細切れ1P、らでぃっしゅぼーやのミニ豆腐2P、らでぃっしゅぼーやの油揚げ1P、平飼卵6個
・同梱書類 お試しセット商品のご案内、おすすめ商品診断チャート、らでぃっしゅぼーやご利用ガイドブック
平飼卵とわさび菜、イチゴでシンプルな朝食プレート。とにかくイチゴがべらぼうにおいしかった!!
・感想 箱を開けて中を見た途端、イチゴの華やかさが目を引きました。葉物野菜がたくさん入っていて、使い勝手のいいお試しセットを作ってくれてありがとう!と好印象。また、同梱書類が少ないのも特徴です。書類には「手作りのすすめ」とか「おうちごはん」などのキーワードが豊富です。もともと野菜セットの購入が必須だったらでぃっしゅぼーやらしく、ターゲットとしている顧客層は「野菜たくさん手作り派」「丁寧な暮らしを楽しむ人」なんだろうと想像しました。料理嫌いの人が見たらちょっと引くかもしれません。
野菜はそれぞれおいしかったのですが、特にイチゴは昨今食べた中で最高においしく、このためだけに会員になってもいいと思うほどでした。丹沢高原豚は、誰が作っているか見に行ったこともありますが、とてもおいしい豚肉でした。飼料にこだわっていらっしゃるからでしょう。
おいしさがよくわかるものを選んである、そんな印象のお試しセットですから、らでぃっしゅぼーやのお試しセットは誰かに送りたくなる商品が満載。プレゼントには最適ではないでしょうか。
5-3.オイシックス
・お試しセット1,980円
・セット内容 キット野菜とジューシーそぼろのビビンバ(二人前)、みつトマト1P、高原サラダほうれん草1袋、りんご1玉、かぼっコリー70gカット、深層水育ち富士山麓卵(6個)、カットぶなしめじ、飛騨高原牛乳180ml、フライパン一つで!チキンのトマト煮、ご飯がすすむ塩鮭2切れ、とろーりなめらかご褒美プリン1個、グリーンマークベーコンスライス
・同梱書類 3daysおいしく食べる説明書、オイシックスご利用ガイド、キットオイシックスの始め方、入会特典のご案内、Oisixdays「おいしい」のある生活
野菜とジューシーそぼろのビビンバのできあがり。温泉卵もすでに完成しているので皮をむくだけでOK!味付けを濃い目にすれば野菜で増量が可能かも。
・感想 キットオイシックスが本当に20分で完成したので感動しました。野菜がカットしてあるためゴミも出ず、洗い物もしなくていいとくれば、忙しい人、時短料理を必要とする人にはとても便利な商品です。お試しセットに入っている商品で、あと2日分の晩御飯ができるレシピが入っていて、お試しセットで合計3日分の晩御飯を作ることができるのもいい感じ。お料理が苦手な人にはうれしい仕組みです。
野菜や果物の味は特に可もなく不可もなく普通で、グリーンマークのベーコンスライスは近所のスーパーで買える商品なのであれれ?という感じ。また、サラダほうれん草は水耕栽培でした。味よりも使いやすさ優先なのかも。プレゼントにするならキットオイシックスを1週間分とかが喜ばれそうですが、会員登録をしないとダメみたいです。
5-4.東都生協
・お試しセット 500円
・セット内容 ベビー白菜1個、有機玉ねぎ400g,有機人参500g,有機短大根1本、かぶ500g,有機小玉じゃがいも400g 卵6個
・同梱書類 東都みのり青果ボックスのお知らせ、産直一筋、だから信じられる(ご利用案内)
※生協職員の方が野菜セットを直接お届け。商品説明や東都生協の説明をしてくださいます。これが嫌な人には向きません。
シンプルな有機野菜セット。これが500円とはお買い得!有機野菜を試してみたい人にオススメです。
・感想 有機農産物のみのセットでお試しセット500円は割安なので、通常価格はと聞いてみると980円とのこと。全ての野菜に産地が表示してありましたが、皆知っている産地だったので、農家の顔を思い浮かべながらおいしくいただきました。試食用にといただいた卵は平飼卵ではなくケージ飼いの卵だとのこと。野菜は有機栽培なのに少し残念。生協職員の方が直接お届けということなのでプレゼントには向きませんが、産直の有機野菜を食べてみたい人はぜひ申し込んでみてください。
5-5.ビオ・マルシェの宅配
・お試しセット 1,500円
・セット内容 玉ねぎ300g,にんじん300g,安納芋500g,青ネギ100g、白菜1/4個、紅くるり(大根)1本、小松菜1束、生椎茸(菌床)100g,ニラ100g(全て有機栽培)、有機野菜ジュース3本
・同梱書類 ビオ・マルシェ入会のご案内、ご利用ガイド、商品情報紙YUKI:KUN、入会申込書一式、5%オフ毎週お届け登録サービス、ビオ・マルシェの宅配、放射性物質への対応について、「豊作野菜50%クラブ」会員募集中! 会員募集キャンペーン
全て有機野菜というのにまずびっくり。野菜をたっぷり食べられるので、まずは有機野菜を試してみたい人にいいのでは。
スイーツのような安納芋。食べすぎて太りそう。
・感想 全て有機野菜というのにまず感動。白菜とかニラとか作るのが大変そうです。知っている産地のものも多かったのですが、おいしくいただきました。野菜の中に1種類だけ入っていた加工品の有機野菜ジュースは「もしかしたら一番のウリなのか!!」と飲んでみたのですが、酸っぱいものが苦手なわたしにはちょっと苦手な味でした。が、届いた商品情報紙にはおいしそうなものがたくさん掲載されていました。特に北海道の放牧豚や、国内でも希少なグラスフェッドビーフ・北里八雲牛など、レアな商品が満載。
有機野菜セットが1,500円というお得感があるため、有機野菜をお試しで食べてみたい人にオススメです。が、プレゼントは不可でした。
5-6.お試しセットはプレゼントできる?
・らでぃっしゅぼーや
ウェブサイトの「おためしセットのよくある質問」に以下のように書かれています。
Q 自宅以外に届けることはできますか?
A 可能です。
注文画面で「お客様情報」にお届け先様の情報をご入力ください。
ご注文後は、お届け先様にお届け日をお伝えください。伝票の送り主名は「らでぃっしゅぼーや」で印字されます。後日、お届け先様へ弊社のご案内のご連絡をさせていただく場合がございます。
とあります。「おためしセットがプレゼントできる」とうたっているのはらでぃっしゅぼーやだけでした。
・大地を守る会
ウェブサイト上には記載はありませんが、お客さまサポートセンターに確認したところ、お試しセットのプレゼントは注文後の宛先変更で可能だそうです。宛先変更は、お届け日を含めた4日前の正午まで。その他の商品をプレゼントする場合は、大地を守る会お取り寄せ広場で可能ですが、会員登録をする必要があります。
・オイシックス
お試しセットのプレゼントは不可でした。気になるキットオイシックスは、会員登録をすればお友だち紹介キャンペーンにてプレゼントが可能だそうです。しかし、会員でもプレゼントのみの注文は不可だとのこと。残念!
・ビオ・マルシェ
お試しセットのプレゼントは不可。会員以外の人はネットショップからの注文であればプレゼントが可能だそうです。
6.有機食材の宅配まとめ
それぞれの団体の取扱商品の数も、自主基準もこだわりも、それぞれに特徴があります。商品構成も若い世代に向くところ、年配の方が向いてるところ、野菜好きな人、時間がない人、日用品がそろえたい人など、用途別に適した団体があることも、今回調べてみて初めて知りました。1つの団体にこだわらず、数社併用で日用品と生鮮品をそろえるなど、上手に活用して楽しい暮らしを演出できるのではと思います。
最後に1つ、業界の内緒話を。有機野菜や減農薬栽培の果物を栽培している生産者は、全国でも非常に限られた人たち。したがって、複数の有機食材の宅配会社に同じ生産者グループ名で出荷されていることが多いため、同じ生産者名で価格が違うなんてことがあります。これは生協と株式会社という組織の形態で利益率が違うことの他にもう1つ理由があります。
生産者グループは複数の有機食材の宅配団体に出荷していることが多いのですが、それぞれの宅配団体によって取扱基準が違います。そのため、グループ内でそれぞれの団体の基準に合わせて栽培する生産者を分けている場合があります。つまり、同じ生産者グループ名でも同じ人が作っているわけではないのです。特に、農薬に厳しい制限がある団体に出荷するためにはその制限内の農薬で栽培しなくてはならず、その分技術が必要なため出荷価格も当然違うことになります。価格だけ見ていては、うっかり見逃してしまうメリットがあります。価格と安心、じっくり選びたいですね。
食べものは、日々自分の原材料になるものです。家族や自分の健康のためのいい食材を選択する、これはとても大切なこと。いつか有機食材に興味を持ったその日のために、お役に立てれば幸いです。