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日本酒好きにプレゼントするお酒の選び方

はじめに

日本酒が大好きなあの人にお酒を贈りたい――これ、とても難しいミッションだとわたしは思うのです。たかが酒選びと思うなかれ。日本酒には繊細で複雑な味わいがあり、これをこよなく愛する人は、お酒に一家言ある方がほとんど。いつもは寡黙な方でも、日本酒のことを語らせたらもう止まらない。普段からは考えられないくらい饒舌になり、「あのとき飲んだ〇〇という酒を俺は忘れない」という具合におっしゃいます

まず、これだけは申し上げておきたい。安易に「値段が高いから」とか「有名だから」という理由で銘柄を選んではいけない。好みに合わなかったら、相手を喜ばせるつもりが逆に「こんなマズイ酒を送ってきやがるバカ舌めがっ!」とあなたの株を大暴落させてしまうかもしれません。

事実、新潟の銘酒「越乃寒梅」が口に合わず、奥様に料理酒に使うよう申しつけたツワモノをわたしは知っています。これがお世話になった人や目上の人だったらと思うと薄ら寒いものさえ感じる――それほど日本酒好きの好みは千差万別で独特。だから贈って喜ばれる日本酒選びは難しいのです。ましてや自分に日本酒の知識がない、それどころかコース料理の乾杯酒を口にしただけで顔が真っ赤になってしまうような下戸だったらなお難しい。

これから語ります「日本酒好きに贈るお酒の選び方」は、日本酒に含蓄のある人にも、そうでない人にも、お役に立てれば幸いです。

目次

 1.日本酒好きに喜ばれるお酒選びは難しい!

1-1.美味しくなった最近の日本酒

1-1-1.かつての「日本酒イコール安酒」のイメージはどこから?

10年くらい前から、美味しい日本酒銘柄は多くなりました。かつての「甘ったるい、くどい、ベタベタする、悪酔いする」というイメージはもはや過去のものです。第二次大戦中からの食料難、その後の急激な人口増加に対応するため、当時の酒造メーカーは原酒に工業的に造ったアルコール、糖類、アミノ酸を添加し、同じ量の酒米で3倍の酒を造る製法を編み出します。これが三倍増醸酒、いわゆる「三増酒」と呼ばれるもので、当時まだ所得が低かった庶民の心を大いに慰めてきました。

しかしこの三増酒、添加物のおかげで「ベタベタ、甘ったるい、くどい」といった「オヤジが大量に飲む安酒」のイメージを定着させる元凶になりました。そのため経済が安定成長期に入り国民の所得が向上すると日本酒は見向きもされなくなり、シェア、生産量ともビール、ワイン、ウイスキーといった他のお酒に大きく水をあけられていくことになりました。

1-1-2.小さな地方蔵元の奮闘

日本酒の人気凋落とともに多くの蔵元が窮地に陥っていく中、三増酒には見向きもせず、根本に立ち返り理想の日本酒を追求しつづける酒蔵がありました。手間が掛かり、高度で精細な技術を要するが故、わずかしか生産できない純米吟醸酒に特化した小さな地方酒蔵です。彼らが醸し出す美酒は、舌の肥えた左党の間で静かな人気を博すようになり、バブル期の中頃くらいから、吟醸酒を中心とした美味しい地酒がブームとなっていくのです。現在では欲しくてもなかなか入手困難な山形の「十四代」、洞爺湖サミットの晩餐会で供された愛知の「磯自慢」などがそれで、やがて「獺祭」や「新政」といった地方発の超有名ブランドも生まれました。

次節以後では、できるだけ多くの美味しい銘柄を紹介すると同時に、買い方、選び方の知識を語っていくことといたします。

2.日本酒の味わいはさまざま

日本酒の原料は米と麹です。法律的にもこれに例外はなく、麦などの他の穀物や果実を加えて造ることもありません。ですから味わいに大きな差が生じるはずはなさそうなのですが、実際には蔵元、製法によって違いが生じてきます。以前からこれを甘口・辛口、軽い・どっしり、フルーティーなどと表現してきましたが、いまひとつ分かりにくいものです。

例えば「辛口」といっても、料理で言う「スパイシー」とは違う。ドライビールのように単にアルコール度数が高いわけでもない。「甘くない」と言うべきなのでしょうか、わたしにもうまく表現できません。「キレがある」とか「スッキリしている」とか、いろいろな表現が組み合わされると思います。つまり、日本酒の味わいは複雑で、捉え方もさまざまなのです。

「辛口が好き」と日頃から言っていた人に、ラベルに「辛口」とある名の通ったお酒を贈ってもあまり喜ばれなかったりもする。だけどプレゼントするからには絶対に喜んでもらいたい――本項では、そのための基礎知識をご紹介します。

2-1.製法によって異なる日本酒の味わい~特定名称酒

お酒のラベルには「純米」とか「大吟醸」と標記されておりますが、よほどコアな日本酒好きでないかぎり、この意味を正確に語れる方は少ないかと想像いたします。しかし、次の二つの分類法の組み合わせを知れば、ラベルやウェブサイトの記載を読んだだけで、ある程度はお酒の性格をつかむことができますので、銘柄を選ぶ際には便利でしょう。

2-1-1.原料による分類~純米系と本醸造系

先に「日本酒の原料は米と麹」と書きました。ならばわざわざ「純米」と明記する必要はないはずです。冒頭に書いたアルコール、糖類、アミノ酸で「水増し」した三増酒は、現在の酒税法では清酒には分類されません(主に料理酒に分類されます)が、ややこしいことに清酒には、三増酒と同じ手法で2倍ほどに増量した「普通酒」というカテゴリーが存在し、国内流通量の7割ほどを占めています。が、これをプレゼントする人はまずいないはず。「普通酒」以外はすべて国税庁が定める「特定名称酒」に分類されており、大切な人へのプレゼントには「特定名称酒」から選ぶものと考えてください。

ではまず、純米系と本醸造系。

酒税法で「純米系」の日本酒とは「米と麹(と水)だけで造ったお酒」と定義されます。原料米が持つ米本来のうま味、自然な香気が特徴です。

これに対し、米と麹で造った原酒に醸造用アルコールを添加して、風味、飲み口、アルコール度数を調整したお酒が「本醸造系」の日本酒です。キレがよく、お燗にも適する銘柄が多く含まれます。アルコールの添加量は原料米重量の10%以下に制限されており、糖類、アミノ酸を混ぜた普通酒、三増酒とはまったく別物と考えてください。アルコールのみを添加するので「アル添酒」とも呼ばれています。

2-1-2.精米歩合による分類~吟醸酒、大吟醸酒

米の外皮に近い部分には脂肪、タンパク質、灰分が多く含まれ、米粒を丸ごとお酒造りに使うと雑味の原因となります。酒米の中心部には「心白」と呼ばれる雑味成分が少なく、でんぷんが程よく入った柔らかい部分があります。この部分を取り出すことができればスッキリした味わいのお酒になりますし、柔らかい心白には発酵の第1段階を担う麹菌が入り込みやすくなります。

この雑味を含む外側の部分を削ることを精米といい、原料米をどれだけ削ったかを表す指標が精米歩合です。精米歩合60%なら元のお米の40%を、精米歩合23%なら実に4分の3以上もの原料米を削っていることになります。この精米歩合によって、特定名称酒は大吟醸、吟醸、本醸造に分類されます。吟醸酒で精米歩合60%以下、大吟醸酒では50%以下となります。

歩合が小さい吟醸酒では、原料米をより多く削るわけです。それだけ酒米が多く必要になりますので、価格は高くなります。雑味が少なくスッキリとした味わいと引き換えのためにはやむを得ないことなのです。精米歩合が特に小さい日本酒として「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」、「大吟醸 越乃寒梅 超特選(精米歩合30%)」などが有名ですが、40%から下はそんなに変わらないという意見もありますので、お酒をプレゼントする相手の「通」レベルで気楽に判断すればいいと思います。だけどラベルに「二割三分」とか「三割九分」とあったら、グッとくる人もいるでしょうね。

2-1-2-1.精米歩合だけじゃない、吟醸酒の吟醸酒たる資格。

吟醸酒、大吟醸酒を名乗ってよい条件は、吟醸造りをしてい場合に限られます。原料米の吟味、もろみの管理、低温発酵、酵母の選定と管理など、手作業と勘に頼るところも多くどうしてもコスト高になります。次項では、割高に思えるけれど買って・贈って損のない吟醸酒をできるだけたくさん紹介いたします。

特定名称酒の分類は日本酒に詳しくないと理解しにくいので、下表を参考にしてください。

【特定名称酒の原材料と精米歩合による分類】

精米
歩合
本醸造系

米+麹+醸造用アルコール)

純米系

米+麹)

50

以下

大吟醸酒
雑味が少なく果実のような芳香(吟醸香)が引き立つものが多い。スッキリとした味わい
純米大吟醸酒
雑味が少なく吟醸香が際立つ。軽快でかつ上品な味わい。日本酒の最高峰に位置する。
60
以下
吟醸酒

軽快ですっきりした味わい。

 

純米吟醸酒

原料米のうま味が際立つもの、吟醸香が際立つものなどさまざま。

70
以下
本醸造酒

比較的廉価な淡麗辛口酒が多い。

純米酒

香り少ないが、コクのあるものが多い。

2-1-2-2.「特別純米酒」、「特別本醸造酒」の「特別」とは

酒税法では、例えば精米歩合が高い純米酒でも、ある特定銘柄の――「兵庫県産の山田錦を100%使いました」とか「吟醸酒に近い65%の精米歩合で造った本醸造酒」といった具合に、特別に品質向上に腐心したことをラベルやパッケージに標記すれば「特別」を名乗ってよろしいことになっております。確かにただの純米酒、ただの本醸造酒よりはちょっとだけ品質がよろしいと考えられますが、酒税法で許されている表記法の一つというだけなので、プレゼントではそこまで考えなくてもいいとは思います。

ただし、酒米の産地で「栽培好適地-特A地区」などの表示がありましたら美味しい(高価な)お酒と思って間違いはないでしょう。

2-1-3.プレゼントには「純米」でなければダメ?

かつての三増酒のように、アルコールを添加すると品質や味わいが落ちると思われるかもしれませんが、特定名称酒へのアルコール添加は節度をもって行われています。

確かに吟醸より純米吟醸、大吟醸より純米大吟醸の方が、アルコールを添加していない分、原料米が持つ風味、味わいが強くなります。ではアルコールを添加したお酒が美味しくないかというと必ずしもそうではなく、目的を持ってアルコールを加えている場合もあり、中にはお酒好きに喜んでもらえる銘柄も存在します。

アルコールを添加する理由は、主に次の三つとされています。

  1. 吟醸香をより強く表現したい場合。
    フルーツの香りにも例えられる吟醸香は、アルコールに溶け込む性質があります。お酒を口に含んだ時、体温で香り成分を含んだアルコールが発散し、より強く吟醸香を感じやすくなるというわけです。香水や口臭予防の洗口剤にアルコールが含まれているのと理由は同じです。
  2. 淡麗辛口に仕上がる。
    純米酒は原料米の旨みに由来する味わいがありますが、アルコールを添加することでスッキリとした飲み口になります。淡麗辛口がお好きな方には、名の通った銘柄の吟醸、大吟醸のアル添酒を選ぶのも選択肢の一つです。
  3. 保存を考えて。
    銘柄によっては、発酵を助けてくれた乳酸菌が出荷後も生き残っている場合があります。これが繁殖すると風味が落ちてしまいますので、アルコールを添加して品質の劣化を防ぐという面もあります。

2-2.ラベルの見方

酒屋やデパ地下で、現物を手にすることもあるでしょう。手に取った日本酒のラベルには、そのお酒の基本的な性格が書かれています。お酒選びの判断材料になりますので、これを解説します。

❶特定名称の表示(純米、純米吟醸大吟醸など) ➋アルコール度数 ➌原材料名 ❹製造元と住所 ➎容量 ❻酒造法上の名称法 ❼製造年月日(瓶詰めされた日)

本項をお読みになった方なら既にお分かりの項目ばかりですが、表ラベルで気を付けるべきは❼の製造年月日です。次項をご覧あれ。

2-2-1.製造年月日と「BY」

「ネットショップで希少な日本酒を思いのほか安く買えたので念のため製造年月日を確認したら、どうやら売れ残りの古い酒をつかまされたようだ」という趣旨の書き込みを見かけたことがあります。もちろん、そういった悪質な酒販店もあるでしょうが、割り引いて考えた方がいいかもしれません。生存年月日は上記図にあるとおり、瓶詰めされた日であって醸造された日ではありません。ツイッター上で「だまされた」と訴えていた御仁は、もしかすると製造年月日ではなく「BY」を見てそう嘆いたのかもしれません。
BYとはBrewery Year(ブルワリー・イヤー)=製造年度のことで、例えばラベルにBY29とあったら、平成29年7月1日から翌30年6月30日までに醸造されたことを意味します。詳しくは語りませんが、日本酒の新年開始は伝統的に7月なのです。

例を挙げます。「三年熟成」や「古酒」と銘打った、数年寝かせてから瓶詰めするお酒の場合、製造年月日は今年でも、BYは数年前になります。このように、熟成に期間を要するお酒はBYと製造年月日にタイムラグが生じる場合があるので覚えておいてください。また、こだわりのある酒屋さんでは意図的にお酒を寝かせてから販売することもあります。もしも店頭でBYと製造年月日がかけ離れていたら、率直に店主に尋ねてみるとよろしいでしょう。

裏ラベルがある場合は、図の❶原料米および精米歩合、❷使用酵母に目を通しましょう。

精米歩合は前項で述べたとおり、どれだけ米を磨いたか。原料米は山田錦、五百万石が多いのですが、品種は無視してもいいです。が、時々「栽培好適地 特A地区」と表示されていることがあり、この場合原料米の質は高いと思ってください。

❷の使用酵母ですが、最近の傾向から言って、自社酵母を使ってフルーティーな仕上がりを目指している銘柄が多いです。

「きょうかい6号酵母」は秋田の新政酒造で発見された伝統的な酵母、「きょうかい7号酵母」はバナナやメロンのような香りを放ち、最近はリンゴに似た香りを放つ「1901号酵母」や「1801号酵母」の使用が多くなりました。

その他、お酒の性格を表す表示を列記します。

  • 生酛(きもと)、山廃
    蔵に住み着いている酵母を使って発酵させる製法。じっくり発酵が進むので風味豊かなお酒になります。
  • 滴(雫)取り、遠心分離、中取り、あらばしり
    酒造りの最終段階で、もろみから酒を搾る、あるいは抽出する時に美味しいところを取り出したのだということを表します。いずれも雑味が少ないフレッシュな味わいになります。
  • 無濾過
    読んで字の如く、ろ過しないお酒です。日本酒本来のうま味とコクが楽しめます。酵母や乳酸菌が生きている場合は出荷後も熟成が進みますので、風味の変化を楽しめる反面、温度管理が必須。豊かで複雑な味わいが、料理の味を引き立てます。
  • 火入れ
    早い話が殺菌のこと。加熱して発酵を担った酵母、乳酸菌を殺す過程です。出荷後の品質が安定しますが、加熱した分フレッシュさが失われる傾向にあります。ボトルに詰めてから加熱する方法が最近の傾向で、抜栓した時の香りが良いとされます。火入れしない方がいいというわけではありません。

2-3.淡麗辛口の本質~甘口、辛口とは

2-3-1.出身地によって日本酒の好みは異なる

ふた昔以上も前の話で恐縮ですが、学生時代、新潟にへばりついて生きてきたわたしに、県外の友人から、当時とても人気があった「越乃寒梅」を手に入れてくれるよう頼まれることがしばしばでした。なんでも銀座のクラブではグラス1杯が5,000円で提供されていたそうです。興味本位で飲んでみましたらスッキリしすぎていて、やせ細った味に感じました。当時は酒の味も分からない二十歳そこそこの若造でしたから、美酒というものはこういうものか、と割り切ったものです。

70年代、ある日本酒の権威が雑誌に幻の酒として「越乃寒梅」を紹介した際、「酒は淡きこと水の若しをもってよしとする」と荘子の一節を日本酒になぞらえたのが淡麗辛口ブームの先駆けだったと言われています。今にして思えば、あの甘くてくどい三増酒へのアンチテーゼだったのかもしれません。

そして現在、わたしの周辺にいる新潟の酒豪に日本酒の好みを尋ねると、人気が高く手に入りにくい「新政 ヴィリジアン」も「獺祭 磨き二割三分」も、甘ったるくて口に合わない、という意見が返ってきます。北海道や九州のお酒もしかり。1人や2人ならまだしも、ほぼ全員が同じことを言う。わたしと同世代――アラフィフ~アラ還に達して味覚と嗅覚が固定してしまったのか、それとも新潟県民のDNAには淡麗辛口好きが刷り込まれているかのどちらかとしか思えなくなりました。

このように、プレゼントする相手に喜んでもらうには、出身地や年齢も考慮すべき大切な要素だということが言えると思います。若い人やフランクな付き合いをしている人には「こんなお酒もいかが?」という具合に好みをはずして冒険したり、スパークリングなどで奇をてらってみるのもいいが、年配者や目上の人には好みを見極めて手堅くコンベンショナルに選ぶのが良さそうです。

2-3-2.日本酒度では甘い辛いを判断できない

ラベルはもちろん、ネットや雑誌などの銘柄紹介で「日本酒度」が表記されていることがあります。

マイナスほど甘く、プラスに行くほど辛いとされています。日本酒度+4くらいから上が辛口、-4以下が甘口と言っていいでしょうか。しかし、淡麗辛口好きを自認する人でも、日本酒度がさして高くない銘柄を淡麗辛口と捉えている方が少なくありません。あくまでも日本酒度計という機械で計った値であり、日本酒の甘い辛いには、それ以外の要素が複雑に絡んでいると考えてください。

ここでヒントを一つ。日本酒の発酵は、酒米のでんぷん⇒ブドウ糖⇒エチルアルコールという2段階の反応ですから、杜氏さんがどこで発酵を止めるかで原料米の風合い、糖の甘みの残り具合が変化します。純米酒でしたら、どんなに酵母にブドウ糖を食べ切らせても、甘みは必ず残ります。この甘さを消す手段の一つが醸造用アルコールの添加であり、淡麗辛口を名乗るお酒にはよく使われる手法です。この場合、原料米の風合いも薄まりスッキリとした飲み口になります。つまり淡麗辛口というのは、スッキリしたお酒ということになりそうです。

普段からうわばみのごとく量を飲まれ、何が何でも淡麗辛口がいいという左党には、アル添した吟醸酒の一升瓶が喜ばれる可能性が高いです。だけど価格は安いので、ハレの日用、あいさつ用には力不足かもしれないことを付け加えておきます。

3.プレゼントに最適な日本酒銘柄は?

ここまでは日本酒選びの基礎知識を語ってきましたが、お分かりのとおり「こんな人にプレゼントする銘柄はこれ!」という確たる法則はありません。しかし、それではタイトルを信じて読まれてきた方に顔向けできません。そこで僭越ながら、こんな場合はこれがいいかも(あくまで『かも』です)しれないという銘柄を、プレゼントする相手のパターンに合わせ、なるべく私見を排し、できるだけ多くの文献、できるだけ大勢の日本酒好きから聞き取りを行い、可能な限りたくさんの銘柄を載せてみました。重ねて申し上げますが、どれも確実なマッチングではないかもしれませんが、少しなりともお役に立てれば幸いです。

3-1.贈る相手のタイプ別おすすめ銘柄

3-1-1.お酒さえあれば幸せ! 量を飲む酒豪タイプへのおすすめ

全国47都道府県のうち、一人当たりの日本酒消費量が最も多いのが、わたしが生まれ育った新潟県。ここに住む人はとにかく量をたしなまれるので、普段飲みのお酒にはキレがよく料理の味を邪魔しない、淡麗辛口のアル添酒を選ぶ方が多いようです。そんな酒豪でも、やはりときには蔵元とっておきの高級酒を飲みたいのが本音のようです。

白身魚の寿司、刺し身、生の岩牡蠣などが放つ日本人好みのうま味を邪魔せず、脇役に徹しつつ引き立てるお酒が選ばれます。

【越乃寒梅】(こしのかんばい)
石本酒造株式会社(新潟県) ℡:025-276-2028
直接注文 不可
代表銘柄「越乃寒梅 金無垢」 純米大吟醸
原料米と精米歩合: 山田錦35%
アルコール度数:15~16度
税別価格:\4,300(720ml) \10,000(1800ml) 税別
前項でちょっぴり揶揄した償いというわけではないのですが、自分の故郷の銘柄を最初に持ってきました。純米辛口ブームの先駆けとなった銘柄。山田錦をじっくりと低温発酵させた大吟醸酒。 寒梅伝統の爽やかさに加え、濃厚な広がりを併せ持つ逸品。

〇他のラインナップ「越乃寒梅 大吟醸超特選


原料米と精米歩合 山田錦 30%
アルコール度数 16度
税別価格:720ml\5,200 500ml \3,670

【飛露喜】(ひろき)
合資会社廣木酒造本店(福島) ℡:0242-83-2104
直接注文 不可
代表銘柄「純米大吟醸 飛露喜(写真は『飛露喜 特別純米』)
原料米と精米歩合 山田錦 麹米40% 掛米50%
アルコール度数:16度
税別価格:\2,700(720ml)
ブレイク時の看板商品は下記の「無濾過生原酒」で、生ゆえに流通管理が難しく販売店が限られる。フルーティーでも甘口でもないが、誰にでも合うバランスの良さを持っている。

〇他のラインナップ「特別純米 生詰 飛露喜


原料米と精米歩合:麹米 山田錦50% 掛米 五百万石55%
アルコール度数:17.4度
税込価格:2,552(1,800ml)

【まんさくの花】
日の丸醸造株式会社(秋田) ℡:0182-42-1335
直接注文 可
代表銘柄「まんさくの花 山田錦45
原料米 山田錦 45%
アルコール度数 16度
税抜価格 \3,000(720ml)
低温で熟成出荷される純米大吟醸酒。果実のような香り、山田錦特有のふくよかな旨み、のど越しのキレが高いレベルでバランスされ飽きが来ない。淡麗辛口好きにもすすめられる。

〇他のラインナップ「旨辛口特別純米 うまからまんさく

原料米と精米歩合: 秋の精 55%
アルコール度数:16度以上17度未満
税込価格: \2,730(1,800ml)

【北雪】(ほくせつ)
株式会社北雪酒造(新潟) ℡:0259-87-3105
直接注文 可
代表銘柄「北雪 純米大吟醸 越淡麗
原料米と精米歩合: 越淡麗 40%
アルコール度数:16度
税別価格: \2,500(720ml) \5,000(1,800ml)
海外にも積極的に進出しているブランド。蔵人が栽培した淡麗辛口に向く酒米を磨き、引き際のキレを重視した大吟醸酒。吟醸香が食事を邪魔しないため、淡麗辛口が好きな人にも好適。

〇他のラインナップ「北雪 大吟醸 YK35


原料米と精米歩合: 山田錦35%
アルコール度数:16
税別価格: \9,000(1,800ml) \4,500(720ml)

3-1-2.食事を楽しみながら、ゆっくり飲む人へのおすすめ

しっかりした味付けの料理、例えばイカの塩辛のような酒の肴、バターや肉料理といった洋風の料理を楽しみながらチビリチビリとやるタイプ。本来の日本酒が持つ旨みのある銘柄が並びます。

このタイプのお酒は自己主張がありますので、食べ物の風味を邪魔しないのではなく、共通するうま味、香気による相乗効果が楽しめます。

【天狗舞】(てんぐまい)
株式会社車多酒造(石川) ℡:076-275-1166 http://www.tengumai.co.jp/
直接注文 不可
代表銘柄「山廃純米吟醸 天狗舞
原料米と精米歩合: 山田錦 45%
アルコール度数:15.9度
税別価格: \3,000(720ml) \5,250(1,800ml)
現在に続く、うまい地酒ブランドの一つ。 早くから大量生産に背を向け手間は掛かるが高品質製法を堅持してきた。特に山廃造りには定評。香り、コク、キレの三拍子そろった銘酒。

〇他のラインナップ「天狗舞純米 文政六年


原料米と精米歩合: 山田錦50%
アルコール度数:15.9度
税別価格: \3,426(1,800ml) \1,664(720ml)


【惣誉】(そうほまれ)
惣誉酒造株式会社(栃木) ℡:0285-68-1148
直接注文 不可
代表銘柄「惣誉 生酛仕込
原料米と精米歩合: 山田錦 45%
アルコール度数:16度
税別価格: \3,000(720ml) \6,000(1,800ml)
栽培好適地である兵庫県特A地区の山田錦をふんだんに使用。生酛仕込による上品な口当たりが身の上。甘みと酸味が混然一体となりり、特にぬる燗にすると料理の味を際立たせてくれる。

【花巴】(はなともえ)
美吉野醸造株式会社(奈良) ℡:076-275-1166
直接注文 可
代表銘柄代表銘「花巴 純米大吟醸 万葉の華
原料米と精米歩合: 山田錦 45%
アルコール度数:15.9度
税別価格: \3,000(720ml) \5,250(1,800ml)
大吟醸だが香り立ちは控えめで食事の味を邪魔しない。米本来の味わいと酸味が特徴。

〇他のラインナップ「 花巴正宗 万葉の華 純米大吟醸 限定中取り」
原料米と精米歩合: 山田錦40%
アルコール度数:16.1度
税別価格: \10,000(1,800ml) \5,000(720ml)
大吟醸だが香り立ちは控えめで食事の味を邪魔しない。スッキリしていて、かつ濃醇な味わいと酸味が特徴。直接ネットで蔵元に注文できるが限定品のため売り切れ必至。

3-1-3.とにかく有名な人気銘柄を、と言う人に

1度は耳にしたことのある銘柄をプレゼントされれば誰だって嬉しいはずです。流行り廃りを乗り越えてきた一品を紹介します。ただし、贈る相手の好みは考慮してください。

【新政】(あらまさ)
新政酒造株式会社(秋田) ℡: 018-823-6407
直接注文 不可
代表銘柄「天鷲絨 2017 Viridian」
原料米と精米歩合: 美郷錦 40%
アルコール度数:15度
税別価格: \3,500(720ml) 中取り価格\4,500(720ml)
獺祭とともに新しい日本酒ブームをリードしてきたブランド。全量純米、全量六号酵母、全量秋田県産米、全量生もと造り、全量四号瓶、全量添加物全廃の「オール宣言」に取り組む。全国で使われた「きょうかい6号酵母」が採取された蔵としても有名。ラピスラズリなど、個人的にはジャケ買いしてもいいと思う。
ひとことで言えば「芳醇」にして「複雑」。甘さと酸味が絡み合い、キレもある。淡麗辛口好きには向かない。
代表銘柄「№6(ナンバーシックス) X-type


原料米と精米歩合: 秋田県産酒造好適米 40%
アルコール度数:15度
税別価格: \3,000(720ml) 中取り価格:¥4,000(740mℓ)

【獺祭】(だっさい)
旭酒造株式会社(山口) ℡: 0827-86-0120
直接注文 可
代表銘柄「獺祭 磨き二割三分
原料米と精米歩合: 山田錦 23%
アルコール度数:16度
税別価格: \10,000(1800ml) \5,000(720ml)
社員による徹底的な品質管理の元で生産される、言わずもがなの超有名銘柄。吟醸造りを科学的に探求したと言っても過言ではない。秋田の「新政」と並び、新しい日本酒のあり方を牽引してきた。安倍首相がオバマ元大統領に贈ったことで一気にブレイク。増産体制が整ったので、かつてほど入手は困難ではない。華やかで強い吟醸香が特徴で多くのファンがいる反面、淡麗辛口が好みの人からは否定的な意見も。

〇他のラインナップ「獺祭 磨き その先へ」


原料米と精米歩合: 山田錦 非公表
アルコール度数: 非公表
税込価格: \32,400(720ml)

【十四代】(じゅうよんだい)
高木酒造株式会社(山形) ℡:0237-57-2131
直接注文 不可
代表銘柄「十四代 純米吟醸 龍の落とし子
原料米と精米歩合: 龍の落とし子 50%
アルコール度数:16度
税別価格: \3,370(1,800ml)
最も入手困難な銘柄の一つ。経営責任者が酒造りを陣頭指揮する蔵元杜氏の先駆け的存在。やわらかい口当たりと芳醇な味わいが特徴。希望小売価格の何倍にも値付けがされている場合があり購入には注意を要します。これについては別項で詳述します。

〇他のラインナップ「十四代 本丸」特別本醸造


原料米と精米歩合: 美山錦55%
アルコール度数:15度
税別価格: \2,047(1,800ml)

【黒龍】(こくりゅう)
黒龍酒造株式会社(福井) ℡:0776-61-6110
直接注文 不可
代表銘柄「黒龍 大吟醸 龍
原料米と精米歩合: 兵庫県産山田錦 40%
アルコール度数:15度
税別価格: \4,200(720ml) \8,400(1,800ml)
ワイン熟成の概念を取り入れ、低温で長期熟成された大吟醸。昭和50年の発売以来のロングセラー。大吟醸のパイオニア的存在。

〇他のラインナップ「黒龍 石田屋


原料米と精米歩合: 山田錦35%
アルコール度数:15度
税別価格: \10,300(720ml)
プレミア日本酒の先駆け的存在。バブル期からのロングセラー。ボトルもしゃれている。

【醸し人九平次】(かもしびとくへいじ)
株式会社萬乗醸造(愛知) ℡:052-621-2185
直接注文 不可
代表銘柄「醸し人九平次 別誂(べつあつらえ)
原料米と精米歩合: 山田錦 35%
アルコール度数:16度
税別価格: \4,245(720ml) \8,490(1,800ml)
美味しい地酒ブランドのパイオニアの一つ。全国の若い蔵元杜氏に多大な影響を与えた。芳しい吟醸香に加えて芳醇な味わい。ワインを研究している蔵元の酒だけにフランスの三つ星レストランにも置かれているほど。

〇他のラインナップ「醸し人九平次 純米大吟醸 彼の地<かのち>


原料米と精米歩合: 山田錦40%
アルコール度数:16.1度
税別価格: \6,300(1,800ml) \3,150(720ml)

3-1-4.お燗で飲むのが好きなら

吟醸酒ブーム以来、すっかり冷酒がスタンダードになったきらいがありますが、年配の方と酒席を共にしたときは必ずと言っていいほどお燗が注文されます。わたしも長時間の宴席では、ペースを保つ意味でお燗を飲むことにしています。冷や酒は,酔いが後から回って思わぬ失態を演じてしまう場合があるからです。

そんな安全策のためではなく、燗酒は熱を加えることによって閉じ込められていた風味が解き放たれますので、手頃な価格のお酒でも十分に楽しめます(冷めてしまうまでの間ですが)。ただし安価であるが故に、プレゼントされた側がどう思うかは悩ましいところ。次に挙げますのは、吟醸系であってもお燗に適していると考えられるものです。このタイプを選ぶ際には「生酛」、「山廃」がキーワードになります。

3.1.2.食事を楽しみながら、ゆっくり飲む人へのおすすめ」で紹介した【惣誉】もお燗がよろしいかと。

【龍勢】(りゅうせい)
藤井酒造株式会社(広島) ℡:0846-22-2029
直接注文 可
代表銘柄「龍勢 別格品 純米大吟醸 生酛仕込み
原料米と精米歩合: 山田錦 40%
アルコール度数:17度
税別価格: \5,400(720ml) \10,800(1,800ml)
純米酒、生酛仕込みに早くから取り組んできた蔵元。現代の若い蔵元杜氏に大きな影響を与えた。濃厚な旨み、ほどよい酸味が、チビリチビリと熱燗で味わうのに向く。常温でも。

〇他のラインナップ「龍勢 純米吟醸白ラベル


原料米と精米歩合: 山田錦60%
アルコール度数:17~18度
税別価格: \4,536(1,800ml) \2,268(720ml)


【独楽蔵】(こまぐら)
株式会社杜の蔵(福岡) ℡:0942-64-3001
直接注文 取り扱い店舗を紹介
代表銘柄「独楽蔵(こまぐら)沁(しん)豊熟純米大吟醸
原料米と精米歩合: 山田錦 40%
アルコール度数:16度
税込価格: \3,996(720ml) \8,100(1,800ml)
やや甘く、白ブドウのようなほのかな香りが特徴の食中酒。
開口部が広めの酒器で、ぬる燗~常温がいい。

〇他のラインナップ「独楽蔵(こまぐら)玄(げん)円熟純米吟醸

原料米と精米歩合: 山田錦55%
アルコール度数:15度
税別価格: \3,456(1,800ml) \1,728(720ml)

3-1-5.普段飲んでいるお酒で選ぶ

日本酒好きにも好みがあるように、ほかに飲むお酒にも偏りがあるかもあれません。ビール、ワイン、焼酎、ウイスキー……お酒にもいろいろありまして、なかなかズバリこれ!的に語れないのが実情です、と最初に逃げを打たせていただきまして、一般論的に語ってみます。
「俺は洋酒にゃあ目もくれず、日本酒一本槍!」と仰せの超左党には「3.1.1.お酒さえあれば幸せ! 量を飲む酒豪タイプへのおすすめ」を参考にしてください。これは難しくない。

3-1-5-1.ビールも好きな人

「とりあえずビール」でも、宴席の最後にはぐい飲みを握っているタイプです。延々ビールという方は日本酒好きとは思えないので除外。

本項を書くに当たってかなり悩みました。いろいろ調べましたし、名だたる酒豪に聞き取りもしました。炭酸がはじける爽快感を楽しんでいるのでスッキリタイプの淡麗辛口がよい……とされているようですが、なんとなく釈然としませんでした。

で、私流の結論。最初はビールで入って日本酒に切り換えるタイプの人、実は何でもいいのかもしれません。日本酒にこだわりのある居酒屋店主は、純粋にお酒を楽しむには必ずといっていいほど和らぎ水(チェイサー)を用意しますし、お客にもすすめます。悪酔いしないためでもありますが、一口ひとくち舌をリセットするのが目的。

これに対し、ビールから入って日本酒に切り換える方……あくまでわたしの想像ですが、炭酸でお腹が膨れてきたから、そろそろ度数の高い酒でチビチビいこうか、というところではないでしょうか。つまり口の感覚が麻痺しかけた状態で日本酒へ行っているのでは?

こんな人には、「3.1.3.とにかく有名な人気銘柄を、と言う人に」で紹介した銘柄をプレゼントすれば間違いないかもしれません。あ、くれぐれもビール好きが酒の味も分からないバカ舌だと一刀両断にしているわけではありませんので、勘違いならぬようお願いいたします。

というわけで次項、

3-1-5-2.ワインも好きならズバリこれ

前項、「3.1.3.とにかく有名な人気銘柄を、と言う人に」で紹介した【醸し人九平次】、【黒龍】もこのカテゴリーに入れていいと思います。

【山本】(やまもと)
山本合名会社(秋田) ℡:076-275-1166
直接注文 不可
代表銘柄「山本 Pure Black(ピュアブラック)
原料米と精米歩合: 酒こまち 麹米50% 掛米55%
アルコール度数:15度
税別価格: \2,963(1,800ml)
クレープフルーツをかじった時のようなジューシーさと、キレのよい後味が特徴。現在に続く、うまい地酒ブランドの一つ。生産量はまだまだ少ないが、今後は期待していい。乾杯酒にも向く。

【鍋島】(なべしま)
富久千代酒造有限会社(佐賀) ℡:076-275-1166
直接注文 不可
代表銘柄「鍋島 純米大吟醸 山田錦35%
原料米と精米歩合: 山田錦 35%
アルコール度数:17~18度
税別価格: \5,714(720ml)
淡麗辛口ブームに背を向け、佐賀の濃醇甘コクな酒造りを行い、自然体で食事を楽しめる酒を目指してきた。インターナショナルワインチャレンジで、鍋島大吟醸がチャンピオン・サケに選ばれた。

〇他のラインナップ「鍋島 純米吟醸 山田錦

原料米と精米歩合: 山田錦50%
アルコール度数:16~17度
税別価格: \3,360(1800ml) \1,680(720ml)

3-1-5-3.ウイスキー好きへの提案

ウイスキーがお好きな場合は事情がちょっと複雑です。吟醸酒造りでは排除してしまう渋みや苦みをウイスキー造りでは大切にしている場合があり、吟醸系を味気なく感じてしまう方がいらっしゃいます。あの超人気の「獺祭」が口に合わない方はこのタイプだと思っています(もしくは淡麗辛口オンリーの人)。この場合、わずかに雑味を残す本醸造系がよろしいのかもしれませんが、プレゼントするにはちょっと廉価すぎて真心を示すには難があります。「3.1.2.食事を楽しみながら、ゆっくり飲む人へのおすすめ」で紹介した銘柄もよろしいかと思いますが、熟成により原料米の香りとコクが増した味わいが、ウイスキー好きの心を柔らかく揺さぶるかもしれません。

【古古酒純米大吟醸 天狗舞】
株式会社車多酒造(石川) ℡:076-275-1166
直接注文 不可
原料米と精米歩合: 山田錦40%
アルコール度数:16.1度
税別価格: \10,500(1,800ml) \5,250(720ml)
黄金色に輝く天狗舞の長期熟成酒
穏やかで豊かな香りと味わいが身上。

3-1-5-4.カクテルや果実酒も好き

お酒は好きだが酒豪ではない、どちらかというと甘~いカクテルが好き。料理もお酒もそこそこいけるクチだけどスイーツは別腹というタイプ……女性に多いかな?

ここに紹介するお酒は、日本酒度は高くありませんので、そこのところは考慮してください。筋金入りの左党には「ハズシ」で使えるかも。

【七賢】(しちけん)
山梨銘醸株式会社(山梨) ℡: 0551-35-2236
直接注文 可
代表銘柄「七賢スパークリング 杜ノ奏
原料米と精米歩合: 非公開 (右画像は星ノ輝)
アルコール度数:12度
税別価格: \10,800(720ml)
大吟醸をウイスキー樽で熟成。日本酒らしからぬ風合いが不思議で新鮮。日本酒スパークリングに特化したと言っても過言ではないメーカーです。
ハレの日に仲間と楽しむも良し、乾杯酒にも。

〇他のラインナップ「七賢スパークリング 星ノ輝


原料米と精米歩合: 非公開
アルコール度数:11度
税別価格: \5,714(720ml)

【達磨政宗】(だるままさむね)
山梨銘醸株式会社(山梨) ℡: 0551-35-2236
直接注文 可
代表銘柄「達磨政宗 アイスクリームにかけるお酒
原料米と精米歩合: 日本晴 非公開
アルコール度数:17度
税別価格: ライトタイプ\1,296(120ml)
ヘビータイプ\5,400(120ml)
ネーミングはダイレクトでベタだが、蔵元では昔からかき氷やアイスクリームに古酒をかけて楽しんできたので、それを広く知らしめたいという願いから。甘く濃厚な貴醸酒のライトタイプ、2種の古酒をブレンドしたヘビータイプがある。
原料米と精米歩合: 非公開
アルコール度数:11度

3-2.ハレの日にふさわしい華やかな味わいの銘柄

うってつけなのは、ひとくち含んで鼻腔に華やかな香りが吹き抜けるインパクトのある銘柄になると思います。乾杯酒にうってつけの銘柄が並びますが、前項の「七賢スパークリング」「獺祭」もこのタイプです。

食事中心で長時間の宴席には向かないかもしれませんので、ご注意を。


【磯自慢】(いそじまん)
磯自慢酒造株式会社(静岡) ℡:054-628-2204
直接注文 不可
代表銘柄「磯自慢 大吟醸
原料米と精米歩合:兵庫県特A地区産 山田錦 45%
アルコール度数:16~17度
税別価格: \3,822(720ml) \8,337(1,800ml)
バナナやメロンに似た香りと爽快なキレが特徴。全国の蔵元に多大な影響を与えたブランド。ラインナップの「中取り純米大吟醸」は洞爺湖サミット晩餐会の乾杯酒。

〇他のラインナップ「磯自慢純米大吟醸 ブルーボトル


原料米と精米歩合: 兵庫県特A地区産山田錦40%
アルコール度数:16~17度
年、3回の発売。
税別価格: \5,313(720ml)

【作】(ざく)
清水清三郎商店(三重) ℡:059-385-0011
直接注文 可
代表銘柄「作 智(さとり) 純米大吟醸 滴取り(しずくどり)
原料米と精米歩合: 山田錦 40%
アルコール度数:16度
税別価格: \20,000(720ml)
もろみに圧力をかけず、くるんだ布から染み出し滴り落ちてきた酒を集めた大吟醸酒。芳しい吟醸香とクリアな味わいが特徴。蔵元は数々の日本酒コンテストでの入賞歴がある。伊勢志摩サミット晩餐会での乾杯酒に選ばれてから人気に火がついた。

〇他のラインナップ「作 雅乃友

原料米と精米歩合: 山田錦50%
アルコール度数:16度
税別価格: \10,500(1,800ml) \5,250(720ml)
やや辛口の吟醸酒。この蔵元の銘柄はオンラインで購入可能だが、早期に売り切れるため秋口より要チェック。

【冩樂】(しゃらく)
宮泉銘醸株式会社(福島県) ℡:0242-27-0031
直接注文 不可
代表銘柄「冩樂 純米大吟醸 極上一割八分
原料米と精米歩合 山田錦 18%
アルコール度数:
税別価格:\20,000(720ml)
栽培好適地で採れた山田錦を2割以下にまで削って醸したぜいたくなお酒。7月と12月の2回しか発売されない希少銘柄。程よい吟醸香とキレの良さを併せ持つ。

〇他のラインナップ 「純愛仕込 純米吟醸 冩樂


税別価格 1,800ml\3,600 720ml\1,800
程よい果実のような吟醸香が特徴。香り、キレ、味わいのバランスがいい。通年で販売している。他に季節折々の新酒を販売しているので蔵元へ問い合わせてください。

3-3.食事に合わせて選ぶ~オールマイティーな日本酒

まずネタばらし。日本酒に合わない料理には、これまでお目にかかったことはありません。「フライドチキンには日本酒よりビールでしょう」という意見は認めます。だけどこれ、油でなまった粘膜を炭酸の刺激がリセットするからであって、スパークリングなら日本酒でもワインでもハイボールでも、あるいはコーラでも「合う」と言えそうです。

生の魚介類は日本酒一択と言っていいと思います。例えばヒラメなど白身の刺し身が持つ微妙なうま味を邪魔せず、逆に膨らませてもくれる。これに対し、生の魚介類とワインの組み合わせは、原料のブドウが持っていた有機酸の風味が魚介類の生臭みを強調してしまう場合があり、オイスターバーで食べた松島湾の牡蠣と白ワインの組み合わせはガッカリでした。生臭くて、鮮度が落ちた牡蠣を提供されたのかと疑いもしましたが、日本酒に切り換えたら何ともない。同席した人は皆同じ感想だったようです。せっかく高いワインを召し上がるなら生の魚介類はよしなさい、と申し上げておきます。フランス人だって、キャビアにはウオッカなのですから。

では、日本酒と料理の相性――マリアージュ(フランス語で『結婚』)を語っていきます。

3-3-1.「獺祭」、「磯自慢」などのフルーティーな吟醸酒に合う料理

基本的には味は薄めで、さっぱり感のある料理がベストマッチ。ベタなところでは生ハムメロン、白身魚のカルパッチョ、トマトとモッツァレラのカプレーゼ、魚介のマリネ、冷ややっこなど、洋風の料理との相性がよろしいと思います。海外で評価が高いのが大吟醸ばかりというのもうなずけます。

3-3-2.淡麗辛口系の、のど越しスッキリ、キレ重視のお酒の場合

やはり薄味の料理が合うのですが、魚介、特に白身魚の微妙なうま味を邪魔しないので、和食の食中酒としては最適。油が強い料理も、キレがありますのでマッチします。

タコわさ、焼き魚、白身魚のフライ・天ぷら、ダシ巻玉子、豚の角煮、肉じゃが、高野豆腐の煮しめ、うなぎの蒲焼なども。そして何度も申し上げているように、お造り、お寿司といったところ。

3-3-3.甘み、うま味のある純米系、生酛・山廃系の場合

強い味の料理には、淡麗辛口やフルーティーなものでは負けてしまうので、純米系、山廃仕込みが選ばれます。刺し身でも赤身、ビーフシチュー、ステーキ、手羽先など肉料理全般、ブリの照り焼き、赤魚の煮つけ、チーズ、塩辛・沖漬けなど。

3-3-4.スパークリング

吟醸系がベースですので、「3.3.1.フルーティーなお酒」に準じますが、フライや焼き鳥といった脂っこいものも合わせられます。

3-4.面白い選び方

3-4-1.入手しやすいお値打ちな「有名銘柄」

次項でも語りますが、名の通った人気銘柄ですと手に入れるのもなかなか大変。そんなときに選択肢に挙げていいのが有名ブランドの普及商品。蔵元への直接注文が可能で、生産量が多く価格もこなれていますので、お急ぎの場合にどうぞ(売り切れ御免!)。

雪の茅舎(ゆきのぼうしゃ) 純米吟醸
株式会社斎彌酒造店 (秋田) ℡:0184-22-0536
直接注文 可
原料米と精米歩合 麹米 山田錦 55% 掛米 秋田酒こまち55%
アルコール度数:16度
税別価格:\1,575(720ml) \2,940(1800ml)

南部美人(なんぶびじん) 特別純米酒
株式会社南部美人 (岩手) ℡:0195-23-3133
直接注文 可
原料米と精米歩合 ぎんおとめ 55%
アルコール度数:15.5度
税別価格:\1,365(720ml) \2,415(1800ml)

〆張鶴(しめはりつる) 純
宮尾酒造株式会社 (新潟) ℡:0254-52-5181
直接注文 可
原料米と精米歩合 山田錦 50% 純米吟醸酒
アルコール度数:15度
税別価格:\1,512(720ml) \3,024(1800ml)

上善如水(じょうぜんみずのごとし) 純米吟醸
白瀧酒造株式会社(新潟) ℡:025-784-3443
直接注文 可
原料米と精米歩合 麹米 五百万石 60% 掛米 越路早稲60%
アルコール度数:14~15度
税別価格:\1,370(720ml) \2,730(1800ml)

3-4-2.インスタ映えも狙える? 見た目にインパクトのある銘柄

化粧箱や装飾包装は当然になりました。「新政」などジャケ買いしたくなるようなラベルの日本酒も増えましたが、これにはかないません。

今代司(いまよつかさ) 錦鯉
今代司酒造株式会社(新潟) ℡: 025-245-3231
直接注文 可
原料米と精米歩合 国産米 非公開
アルコール度数:17度
税別価格:\5,400(720ml)
錦鯉をモチーフにしたデザインボトル。経済産業省のグッドデザイン賞をはじめ、数々のデザイン賞を受賞。新潟の蔵元ならではの発想。お正月や、人生節目のお祝いにおすすめです。

3-4-3.お酒好きに喜ばれる「飲み比べセット」

同じ蔵元の飲み比べセットはお得感があって、贈る側、贈られる側双方にメリットがあると思います。例えば八海山の大吟醸、純米吟醸、純米の3本セットという具合に。ウェブサイトがある蔵元ではほぼ全て「飲み比べセット」を取りそろえていますので、確かめてみるとよいでしょう。

ただし、違う蔵元のお酒を組み合わせたセットには注意が必要です!例えば、百貨店のお中元商品に「新潟地酒飲み比べセット」などと銘打って「八海山」「〆張鶴」「越乃寒梅」の3本セットが売られたりしますが、これは保管状態も流通経路もバラバラに集めたものをいったんバラし、百貨店側でセット組みした商品です。蔵元が責任を持って送り出した商品とはちょっとニュアンスが異なります。まあ百貨店の場合はそんなに心配しなくてもよいでしょうが、これがネット通販でしかも蔵元が定めた特約店ではない場合は、避けた方がいいかもしれません。厳密な温度管理が必要な吟醸酒、生酒ならなおのことです。もしかすると品質が劣化したお酒を、大切な人にプレゼントすることになるかもしれません。

3-4-4.名入れ、似顔絵入れサービス

誕生日、還暦祝い、退職祝い、還暦祝いなど、人生の節目に日本酒をプレゼントすることがあるかと思います。そんな時、自分の名前や似顔絵がボトルに入っていたら嬉しいでしょうね。ネット通販サイトを眺めてみますと、名入れサービス、似顔絵入れサービスは普遍的にあるようです。

ここで注意したいのがボトルの中身。銘柄が明記されていない場合があり、お酒好きに贈るなら失礼に当たる可能性があります。もったいなくて飲めない、飾っておくだけで満足、とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、プレゼントする相手の性格を見極めた上でお選びください。特に「獺祭」とのセットで名入れ販売しているケースが見受けられますが、これ、けっこう危ないんじゃないかなと思っています。無名の安酒とのバーター販売、抱き合わせ商法みたいでなんだかスッキリしない。人気の獺祭も、今や入手困難というほどでもなくなりましたので、慌てぬことです。

4.美味しい日本酒の正しい買い方

ここまでに紹介してきた銘柄のうち、過半数が蔵元への直接注文が不可能。このネット通販隆盛のご時世では考えられないことです。特に自社サイトを持たない廣木酒造の「飛露喜」は、70年代の「越乃寒梅」のような幻の酒になっております。地酒ブームの嚆矢的存在、山形の「十四代」も、少ない生産量と販路の関係で、希望小売価格の何倍、下手すりゃ十倍近くもの値付けがされていることがあります。

4-1.当然のことながら蔵元の希望小売価格が妥当です

4-1-1.「獺祭」高く買わないで広告の衝撃~プレミア価格の構造


2017年12月10日の読売新聞に掲載された広告です。当時、人気が爆発していた同銘柄ですが、高く買うしか入手できないとばかり思い込んでいたわたしには衝撃的でした。四合瓶で5,000円のはずが、3~4万円なんてことも珍しくない高嶺の花だったわけですが、おかげで目が覚めました。同時掲載の正規特約店は、蔵元の希望価格で売っているわけで儲けはそこそこ。一方ネットで「ふっかけて」売っている業者は、他者のプロダクトを無断拝借してもうけているバイラルメディア、新商品をいち早く購入しネットオークションに出品して稼ぐ転バイヤーと同種のわけです。法的規制はありませんが、わたしにはダフ屋行為に思え腹立たしくもなってきました。その後、獺祭は増産体制が整ったこともあり価格は落ち着きましたが、依然「飛露喜」、「十四代は同じような傾向が続いております。

4-1-2.高嶺の花を、お値打ち価格で入手できるか?

まず結論から。蔵元の希望小売価格より高くても安くてもいけません。

人気銘柄を廉価で入手したいのは人情でしょうが、あまりに安すぎるものは危ないという法則は古今東西、変わらぬことです。最近では、値引きが強調された「ふるさと納税」の偽サイト、有名なところでは不動産の事故物件でしょうか。こと日本酒に関しては、正規価格より安いものは「なにかある」と思って間違いないでしょう。

かつて自分が経験したことなのですが、バブル黎明(れいめい)期に人気を博した「越乃寒梅」、その空瓶を手に入れてほしいと首都圏在住の人に頼まれたことがあります。目的を尋ねてもなかなかスッキリとは語ってくれませんでしたが、どうやら転売が目的だったようです。

当時の暴露番組で、バーやクラブで余ったブランデーを大きな水槽にぶちまけ、カミュの空瓶にすくい取り密栓、それを新品としてお客に提供している、というのをやっていましたので、それかな、と思ったものです。今はどうなのでしょう。ご存じの方、教えてほしいものです。

4-2.酒屋で買う場合のチェック項目

蔵元に直接オーダーできないもの、ネット通販は心配だという場合は酒屋さんやデパ地下へ出かけていくことになりますが、その際の注意点を述べます。

4-2-1.保存、陳列方法

まず照明。高品質なお酒は、濃い色を付けた遮光瓶か紙でくるまれています。光によって熟成が過度に進んだり、風味の劣化を防いだりする目的があるのですが、室内照明にも同じことが言えます。照明は控えめに、できればほの暗いのがベター。直射日光が当たるのは論外で、このような無神経な酒屋で購入するのは、やめたほうが無難でしょう(新潟市・ナチュレ片山 日本酒コーナー)。

照明の他に重要なのが温度管理。特に夏の高温は日本酒に悪影響を与えます。これが火入れ(加熱・殺菌処理)をしていない生酒、無濾過原酒ともなりますれば、ボトル内に生き残っている酵母や乳酸菌の活性が高進して致命的な結果になりかねません(熟成を期待し、あえて放置する酒屋もあるようですが)。きちんと空調がなされていることはもちろんのこと、生酒、無濾過原酒ならば冷蔵ケースで陳列されていることが大切な要件です。

4-2-2.取扱銘柄に店主のこだわりはあるか

名の通ったお酒=売れるのは確実ですから、商売のためには売れ筋を置くのが定石。どの銘柄が人気かなんて、今どきはちょいと調べりゃ分かります。ですから「オバマ大統領にプレゼントした」とか「サミットの乾杯酒に供された」となると、商魂たくましいお店から注文が殺到することに。そうではなく、自分の味覚を頼りに美味なる日本酒を探訪している店主もいて、気に入った銘柄はどんなに無名でも扱っていたりします。島根の「誉池月(ほまれいけづき)」などが好例で、今のところ扱っている店は少ないはずですが、これから人気が出てくるんじゃないかと思っています。そんな銘柄を見つけたら試しに購入してみて、美味しかったら足しげく通い、できれば店主に顔を覚えてもらうことをおすすめします(理由は後述)。

悪い例を一つ。「カラーズ」、「№6」で有名な「新政」が、地元・秋田でも買えなくなってきたと耳にしました。首都圏での取り扱いを増やしたとも。「新政」よ、おまえもか!――商魂たくましくしたのかと残念に思いましたが、事情は違っているようでした。どうやら蔵元の新政酒造が自社ブランドの温度管理徹底を取扱店にお願いしていて、それが守れない店はたとえ古くからの特約店であっても取引をやめたらしいのです。ぜひ「日本酒LOVE!」のお店で購入してください。

4-3.デパ地下、家電量販店で購入する場合

照明は控えめか、吟醸酒は冷蔵ケースに入っているか――基本的なところは前項、酒屋で買う場合と変わりません(伊勢丹新宿店 「粋の座」)。違うとすれば、品ぞろえを決定するのはバイヤーで、店頭の販売員ではないということ尽きます。それでも日本酒専門売り場を備えたデパートでは、商品知識を蓄えた店員がいる場合が多く、なんでもお尋ねになってみるとよいです。「おすすめのお酒は?」と聞くのではなく、プレゼントする人の情報――年齢、性別、出身地、好みの食べ物、普段飲んでいるお酒を伝え、銘柄をいくつか紹介してもらうとよいでしょう。

ビックカメラでも日本酒を扱っていますが、やはりデパ地下の場合と同様に考えてください。

4-4.通販で買う場合

厄介なのは、これです。入手困難な銘柄の場合は吹っ掛けられていることを承知で購入してしまう人もいるとは思いますが、ここはひとつ踏みとどまっていただきたいものです。酒造メーカーでは、自社製品を希望小売価格で買ってもらうことに腐心しています。転バイヤーが高く売っても自社のもうけが増えるわけではなく、ましてや買い占められでもしたら「美味しいお酒を多くの消費者に届けたい」という蔵元の願いは通じなくなります。古くからの付き合いがある特約店にも不利益になります。

ですからネット通販でお酒を購入する際には、まず蔵元のウェブサイトで正規の小売価格をお確かめください。ただし、スパークリング日本酒を購入するに当たっては、蔵元への直接注文が無難かもしれません。輸送条件によっては抜栓時に暴噴事故もありえるのが日本酒スパークリングでして、蔵元ならそこのところは承知の上で輸送手段を講じると思いますので。

地方の酒屋へ注文する場合もAmazon、楽天、Yahoo!ショッピング等で購入する場合同様、メーカー希望価格で売られているかを確かめてください。蔵元と取引のある特約店であるか否かも大切なポイントです。

5.希少銘柄を手に入れるには

季節限定品の銘柄は、発売のタイミングを見計らっての注文になります。人気銘柄ですと発売と同時に完売となってしまうケースもあるでしょう。狙っている銘柄があったら事前にチェックしておいてください。混乱を避けるために、季節限定品を事前予約で販売している蔵元もあります。
例:「蓬莱泉 純米大吟醸 空」関谷醸造株式会社(愛知)電話:0536-62-0505 直接注文 可
通年販売されている銘柄であっても、新酒発売のタイミングは重要です。ウェブサイトに情報が載っているなら、事前にチェックしておいてください。しかしウェブサイトのない蔵元――「十四代」の高木酒造、「飛露喜」の廣木酒造の場合、やはり特約店頼みになってしまいます。

5-1.特約店で希少銘柄を購入するには

お気づきのとおり、人気の蔵元のほとんどが直接購入不可になっています。これにはいくつか理由がありそうです。転バイヤーに流れるのを回避したい、厳密な品質管理をしてくれる店でなければ卸したくない。品質にこだわる有名どころがネット通販に消極的なのはこのためだと考えられます(直接購入が可能な蔵元は、自前で受注・流通体制を整えていると言えます)。

やはり確実なのは特約店での入手になりますが、これにはコツがあります。いくら特約店だからといって、数に限りがある銘柄を飛び込みの客にはすんなりと売ってくれないかもしれません。特約店でも転バイヤーを疎ましく思っていることでしょうから、人品骨柄の分からない一見さんは警戒していますし、普段からのなじみ客をより大切にもしたい。店主の心の垣根を乗り越えるためには、何度かお店に通い、顔を覚えてもらった上で、自分は本当にお酒が好きで、あるいは大切な人に〇〇という銘柄を贈りたくて、という旨を切々と伝えてください。遠隔地でしたら名刺を置いてきて連絡を待つもよし(何度か通うのがベター)。それでも順番待ちになることがほとんどでしょう。抽選会にエントリーしてやっと入手できることも。

最後に裏技を一つ。行きつけの居酒屋にお目当ての銘柄があったなら、店のマスターに「どうやって手に入れたの?」と尋ねてみることです。もしも正規価格で手に入れていたなら、その入手ルートを紹介してもらう、またはマスターに頼んで手に入れてもらうという方法があります。特約店、居酒屋のいずれにせよ、あなたの「顔」が肝要だということです。

6.あわせて贈ると喜ばれる酒器

6-1.気分が華やぐ漆器の杯

日本酒を召し上がる酒器といえば「ぐい飲み」か「ちょこ」が定番ですが、たまには漆器の杯はいかがでしょうか。漆器は神妙な気分にさせてくれます。おとそには朱塗りの漆器杯が似合いますし、三三九度もやはりこれです。ハレの日に贈るお酒に漆器の杯を合わせて贈るのは、演出としてはよろしいかと思います。

前項で、ボトルへの名入れについては否定的でした。ラベルに似顔絵や名前が入ったお酒を召し上がるのは、もったいない気がしてためらわれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。空のボトルを飾っておくのもどうか……。でも名入れした酒器でしたら繰り返し使えます。漆器の杯でも名入れサービスはありますし。
参考:漆器の伊助 ℡:075-344-9710

6-2.お酒のタイプで酒器を選ぶ

しかし普段使いに漆器の杯はどうかとも思います。毎日が正月気分だったら人生にメリハリがつかない。あくまでお正月やハレの日用と割り切って、その時は高揚感を味わうなんて使い方はおすすめしたいところ。そのほうが漆器も長持ちするでしょうしね。

6-2-1.ワイングラス

フルーティーな吟醸酒におすすめしたいのはワイングラス、それも開口部が広いもの。それでいて内部の空間が広く立ち上る香りをためておける、それでいてグラスを口に付けたときに、鼻孔が開口部の内側に収まるとなお香りを楽しめると思います。

香りはそこそこでキレのあるお酒(つまり淡麗辛口タイプ)には、やや開口部が狭いテイスティンググラスやシャンパングラスがいいと思います。開口部が狭い分、一気に口の中にお酒が流れ込まず、淡麗な味を楽しむには都合がよろしい。冷酒で召し上がることが多いお酒には、柄のついたワイングラスは手の温もりが伝わりにくく最適です。

リーデル、バカラも日本酒用の酒器を売り出しています。

6-2-2.切子

冷酒にちょこなら、手のぬくもりがこもりにくい小さめのものを選ぶのがよいと思います。見た目が華やかですし、お酒を注いだ時、液面に浮かび上がる複雑な文様も楽しめます。

お値段手頃の江戸切子もいいですが、赤が特徴的な薩摩ガラスを用いた切子も素敵です。薩摩切子のほうがやや厚めですので、冷酒なら温まりにくいはず。飲み口の口当たり重視なら薄手の江戸切子を選びます。

6-2-3.陶器

燗酒がお好きなら、まずは備前焼きが定番でしょうか。素朴で暖かな風合い。手にしたときのどっしりとした感触。お酒のぬくもりが手にじわじわと伝わり、なんともほっこりとした気分にさせてくれます。開口部が狭く、飲み口が厚手なものを選ぶと、熱いお酒が一気に流れ込んでくるのを防いでくれます。

昭和の頃は瀬戸焼や益子焼のお銚子とぐい飲みが、どこの家庭にもあったように思います。だけどそれは、普段使いのお茶碗と同じシロモノのベクトル上にありました。そして日本酒がいったん廃れ、再び盛り返してきた現代、華やかな九谷焼きのちょこなんていかがでしょう。青や黄色が特徴的な九谷。金泥を使うことも多く、小さな器でも豪華な雰囲気を放ちます。そんな見た目を裏切る彼のように案外安価で、数百円から高くてもせいぜい2,000円でお釣りがくるはず。可愛い絵柄のものもありますので、若い女性にもおすすめできます。

十四代 中里太郎右衛門 斑唐津ぐい呑み

ぐい飲みの最高峰、お酒道楽が最後に行き着く酒器と言われているのが、硬く締まった肌に微かに青い斑点が浮かぶ斑(まだら)唐津。細かな釉薬のヒビに、お酒の成分がしみこみ、使えば使うほど独特の風合いを生み出します。

7.まとめ~それでもお酒選びに迷ったら

とにかく、日本酒好きに喜んでもらえるお酒選びは難しいです。

のど越しスッキリが好き、フルーティーなのが好き、どっしりとしたのが好き。

冷酒が好き、お燗が好き。

どんな食べ物と合わせるのが好き?

出身地は?

年齢は?

何より人気の銘柄は入手困難で、目当てのお酒が手に入るとは限らない……。

考慮すべき要素を挙げたらキリがなく、しかも悩んだ揚げ句に選択したプレゼントが、必ずしもストライクど真ん中ではないかもしれない。

だから面白いし、喜んでもらえた時の達成感はひとしお。

でも、ここまで述べてきて身もフタもないのですが、それでもお酒選びに迷ったら、プレゼントする相手にお酒の好みを率直にお尋ねするのが一番かもしれません。できればさりげなく、何げなく。でなければサプライズ効果は薄れちゃいますから。

そして機会があれば何度か贈ってみて、社交辞令ではないホンネをお聞きになるのがよろしいかもしれません。あなたを喜ばせたい――その真心が伝わるはずです、必ず。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

笑顔絶えない人間関係の構築に役立てれば幸甚です。

8.【掲載銘柄一覧】(順:東から西へ)

【南部美人】(なんぶびじん)
株式会社南部美人 (岩手) ℡:0195-23-3133

【山本】(やまもと)
山本合名会社(秋田) ℡:076-275-1166

【雪の茅舎】(ゆきのぼうしゃ)
株式会社斎彌酒造店 (秋田) ℡:0184-22-0536

【新政】(あらまさ)
新政酒造株式会社(秋田) ℡: 018-823-6407

【まんさくの花】
日の丸醸造株式会社(秋田) ℡:0182-42-1335

【十四代】(じゅうよんだい)
高木酒造株式会社(山形) ℡:0237-57-2131

【飛露喜】(ひろき)
合資会社廣木酒造本店(福島) ℡:0242-83-2104

【冩樂】(しゃらく)
宮泉銘醸株式会社(福島) ℡:0242-27-0031

【越乃寒梅】(こしのかんばい)
石本酒造株式会社(新潟) ℡:025-276-2028

【北雪】(ほくせつ)
株式会社北雪酒造(新潟) ℡:0259-87-3105

【〆張鶴】(しめはりつる)
宮尾酒造株式会社 (新潟) ℡:0254-52-5181

【上善如水】(じょうぜんみずのごとし)
白瀧酒造株式会社(新潟) ℡:025-784-3443

【今代司(いまよつかさ) 】
今代司酒造株式会社(新潟) ℡: 025-245-3231

【惣誉】(そうほまれ)
惣誉酒造株式会社(栃木) ℡:0285-68-1148

【七賢】(しちけん)
山梨銘醸株式会社(山梨) ℡: 0551-35-2236

【達磨政宗】(だるままさむね)
山梨銘醸株式会社(山梨) ℡: 0551-35-2236

【磯自慢】(いそじまん)
磯自慢酒造株式会社(静岡) ℡:054-628-2204

【蓬莱泉】(ほうらいせん)
関谷醸造株式会社(愛知)Tel:0536-62-0505

【醸し人九平次】(かもしびとくへいじ)
株式会社萬乗醸造(愛知) ℡:052-621-2185

【作】(ざく)
清水清三郎商店(三重) ℡:059-385-0011

【花巴】(はなともえ)
美吉野醸造株式会社(奈良) ℡:076-275-1166

【天狗舞】(てんぐまい)
株式会社車多酒造(石川) ℡:076-275-1166

【黒龍】(こくりゅう)
黒龍酒造株式会社(福井) ℡:0776-61-6110

【龍勢】(りゅうせい)
藤井酒造株式会社(広島) ℡:0846-22-2029

【誉池月】(ほまれいけづき)
池月酒造株式会社(島根)℡:0855-88-0008

【獺祭】(だっさい)
旭酒造株式会社(山口) ℡: 0827-86-0120

【独楽蔵】(こまぐら)
株式会社杜の蔵(福岡) ℡:0942-64-3001

【鍋島】(なべしま)
富久千代酒造有限会社(佐賀) ℡:076-275-1166

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